ソフトバンク杉内俊哉投手(31)の巨人入りが29日、確実となった。これまで球団側とは残留を基本線とした交渉を継続的に行ってきたが、杉内側が昨オフから導入された成果主義の新査定制度に反発し、交渉が決裂。この日、FA権の行使を明言した。水面下で調査を進めていた巨人が獲得に乗り出すことも判明し、このまま巨人移籍となる可能性が高い。

 杉内まで…。タカのエースが、巨人に流出することが確実となった。杉内の代理人である酒井辰馬弁護士(45)がこの日、福岡市内の球団事務所を訪れ、FAの申請手続きを済ませた。シーズン中から残留を基本線に交渉を続けてきたが、決裂。同弁護士は会見し、不在だった杉内のコメントを読み上げた。

 杉内

 悩みに悩んだ結果、FA宣言することにしました。選手契約に関する根本的な部分での考え方について球団と理解し合うことができなかった。宣言後は他に僕を必要としてくれる球団があれば、話をうかがいたいし、ホークスとも交渉は継続するつもりです。

 年俸制度問題がネックとなった。杉内側は成果主義を重視した新査定制度の改善を要望。球団側は譲歩せず平行線のまま決裂した。

 球団提示は4年総額16億円、1年なら1億円アップの4億5000万円(いずれも推定)とみられる。単年なら、今季8勝に終わった杉内に対し特例を認めての大幅増。酒井弁護士も「こちらが想像する以上の額を提示してもらった」という。杉内側も日本シリーズ中に交渉した際は単年契約での残留も検討したが、最後まで球団の査定システム変更の点で折り合うことはなかった。

 酒井弁護士は「杉内俊哉を一番必要と感じた球団を選ぶ。お金だけじゃないけど、重要な側面になる。今後は手を挙げてくれる球団の説明を聞いてから最後にソフトバンクと話す」と説明した。獲得にはソフトバンクの4年総額16億円を上回る資金が必要。現時点で興味を示している球団は少なく、資金力のある巨人が移籍先の最有力候補に挙がる。巨人は来季のV奪回へ効果的な補強策とし杉内を水面下で継続調査してきただけに獲得に乗り出すことは確実な情勢だ。酒井弁護士によると杉内はソフトバンクの球団行事に参加し、12月7日以降に他球団との交渉の席につく予定。

 アジアシリーズのため台湾入りしている王貞治球団会長(71)は、杉内本人から電話でFA宣言する連絡を受けたことを明かし「選手の権利だから、我々は止めようがない。他のチームの話を聞いてみたいということだった。我々としても(交渉する)チャンスがまだあるわけだから」と神妙な表情だった。FA宣言後も交渉は続けるが、両者には埋まらない溝が横たわっているのも実情。今後の交渉が順調に進めば「巨人杉内」が誕生する。

 ◆杉内俊哉(すぎうち・としや)1980年(昭55)10月30日、福岡県生まれ。鹿児島実では3年夏の甲子園でノーヒットノーラン達成。三菱重工長崎を経て01年ドラフト3巡目でダイエー入団。03年日本シリーズMVP。05年最多勝利、最優秀防御率でリーグMVP、沢村賞。最多奪三振2度(08、09年)最高勝率2度(09、10年)。06、09年WBC日本代表。175センチ、85キロ。左投げ左打ち。家族は夫人と1男。

 ◆ソフトバンクが昨オフから導入した金額提示法

 複数年契約を結ぶ場合は、基本年俸を抑えて大幅なインセンティブ(出来高払い)を組み込む。単年の契約でも信賞必罰の意味合いを込め、大幅昇給もある一方、減額制限(年俸が1億円を超えている選手は40%まで、1億円以下は25%まで)が事実上排除されている。今回の杉内との交渉では4年ベースの複数年提示ではインセンティブが組み込まれ、来季単年度の場合は出来高払いを含まない形式での提示だった模様。ただ、複数年契約を結べば、例えば20勝を挙げMVPを獲得した投手が、翌年再び20勝でもMVPを逃せば査定上、昇給しないケースが出てくる。昨年11月に球団が新査定導入を公表した際に、杉内と和田は反発していた。