楽天は5日、春季キャンプでテストを行っていた前阪神下柳剛投手(43)の獲得を発表した。背番号「91」。1年契約で推定年俸1500万円プラス出来高。22年目のベテランが阪神時代の恩師・星野仙一監督(65)の下、4球団目での復活を図る。

 安部井編成部長が「先発としてだけでなく、投球技術など全員が学べるところがある」と獲得理由を述べた直後だった。「安部井が言ったことは取り消します」。突然、野太い声の主が現れた。星野監督だ。互いをよく知る師弟だから言えた冗談だった。笑いに包まれる中、「頼むよ」とクリムゾンレッドの帽子をかぶせてもらった下柳は、監督と固い握手を交わした。

 通算129勝の力量だけではなく、練習態度など「生きた教材」として高く評価された。「若い人が見て役立つと思えば、まねしたらいい。あまりひどい人には怒るかも知れません」と宣言。これまではテスト生だったが「もう選手だからね。明日から鬼になるよ」とニヤリ。だが、小声で「なりません」と続けた。ちゃめっ気も忘れなかった。

 阪神金本知憲外野手(43)から「土俵に上がらんことには始まらんからな」と激励を受けたという。古巣との対戦を聞かれ「先を考える余裕はありません。キャンプを無事に終わってローテに入りたい」と即答した。阪神を戦力外となった後も、トレーニングをやめなかった。「諦めそうになったこともあった。全ての人に感謝したい」。その気持ちを示す舞台に上がった。【古川真弥】