評判通りの才能を、いきなり発揮した。中日ドラフト1位高橋周平内野手(18=東海大甲府)が11日、実戦デビュー戦を決勝二塁打で飾った。アジア・スプリング・ベースボール(SB)の韓国LG戦に「3番三塁」で出場。3打席凡退で迎えた同点の8回無死一塁、直球を捉え右中間を破った。ドラフトで3球団が競合した逸材は、「規格外」をアピールした。

 約2500人の観衆が、この日一番に沸いた。8回無死一塁。高橋周が変速サイド右腕・金寄杓の外角130キロの真っすぐを振り抜いた。打球は右中間真っ二つ。一塁走者・野本の生還を確認すると、二塁上で照れた。「何も考えず来た球を打つだけでした。(瞬間は)記憶に残ってないです。取りあえず1本出たのは安心。うれしいですね」と表情を崩した。

 3打席目までは、洗礼を浴びていた。第1打席は右腕・鄭載福の変化球にタイミングが合わず空振り三振。第2打席も左腕の変化球を見逃し連続三振した。第3打席は右腕・李大煥の138キロ真っすぐを捉えたが、相手好捕で二ゴロ。だが無安打デビューのムードが漂った最終打席。しかも同点、長打が欲しいここ一番で、最高の結果を出した。

 「収穫なし」と辛口だった高木監督を「1、2打席目は球を見過ぎてた。どう対応するか見てたら、3、4打席目は第1ストライクから打っていた。それでいい」と感心させた高い修正能力。これで打撃フォームも固まった。プロの速球に対応するため、キャンプ序盤までスリ足を試していたが「球に力が伝わらなくて」としっくりこなかった。戻したのは高校で71本を打った時と同じ、右足を上げる長距離打法だった。自分の持ち味を見直した原点回帰。プロで生きる道に自信を持てた二塁打だった。

 実はキャンプイン当日、39度も熱があったという。父忠美さん(50)は「母親に“死んじゃうかも”とメールを送ったようです。本当に死ぬ思いでやってたはずです」と明かした。金の卵に日増しに高まる期待と注目度。まだ高校生の身分で重圧は相当なものだ。だが外では一言も弱音を吐かず、高熱の初日にチーム最多6発の柵越えを放った。やはり並の新人ではない。

 「今日の試合を生かして明日また頑張りたい。もっと初球から積極的に振って、今日よりも明日よくなるようにしたいです」と、沖縄の夕暮れにさわやかな笑顔を残した。【松井清員】【高橋周平(たかはし・しゅうへい)プロフィル】

 ◆生まれ

 1994年(平6)1月18日、神奈川県藤沢市。

 ◆71発

 東海大甲府で甲子園出場はならなかったが、昨年8月のAAAアジア野球選手権で日本代表に選抜。決勝韓国戦では木製バットで高校通算71号2ランなど、5試合で20打数10安打13打点。MVP獲得。

 ◆競合

 昨秋のドラフトで中日、ヤクルト、オリックスが入札。甲子園不出場選手の3球団競合は史上初めてだった。

 ◆本領

 キャンプ初日から大砲ブランコらを上回るチーム最多6本の柵越え。4日の特打では140メートル弾など28本の柵越えを放ち、視察した掛布雅之氏も絶賛。他球団007を驚かせた。

 ◆おちゃめ

 初休日の6日は宿舎でイルカとふれあい大はしゃぎ。「(イルカは)頭がいい。(感触は野菜の)ナスみたいでした」。

 ◆サイズ・家族

 180センチ、85キロ。右投げ左打ち。家族は両親と兄、姉。

 ◆年俸

 1200万円(推定)