動いて、勝った!

 阪神和田豊監督(49)が初陣を白星で飾った。今季初の対外試合となった12日、練習試合・日本ハム戦。初回無死一塁からバスター・エンドランを仕掛け、初回一挙6点の猛攻へとつながった。長打待ちの攻撃から積極的に動く野球へ。栗山監督との新顔対決を制し、初采配で己の目指すスタイルを示した。

 監督・和田豊の“所信表明”だった。初回、先頭の伊藤隼がヒットで出塁した。指揮官として初めて采配を振る場面。一塁側ベンチから発せられたブロック・サインには信念が込められていた。初球、2番俊介はバントの構えからヒッティングに切り替えた。思い切りひっぱたいた打球は三遊間を破る。一、二塁とチャンス拡大。これで、やや重苦しかった宜野座球場の雰囲気が一変した。

 「流れを引き寄せる一打にね。その後が打ったからなんだけど(今季は)ああいうことをやっていくよということ。前にも言ったんだけど、馬なりに行くんじゃなくてビジョンを持ってゲームに臨もう。(バスターは)昨日の晩から決めていたから」

 初陣を控えた前夜、和田監督はすでに「初手」を決めていた。選んだのは「待」ではなく「動」-。だれかの一打に頼るのではなく、チームとして1点を奪いに行く。それは、これから1年間の戦いを共にするチーム全体へのメッセージでもあった。この一手で、若虎をしばっていた緊張が解き放たれた。森田が左前に運んで無死満塁。期待の4番中谷は併殺打に倒れたが、その間に1点を先制した。さらに新井良が四球でつなぐと、黒瀬が左前へ、小宮山、死球の後、清水、大和の連続タイムリーで一挙6点を奪った。

 試合中は、攻撃時はもちろん、守備時も立ったまま采配を振った。選手に声をかけ、時おり、メモ帳にペンを走らせた。「初勝利ですが」と問われると、力強くガッツポーズをつくった。練習試合とはいえ、会心の初勝利に笑みがこぼれた。

 「プレーボールの前、どんな気持ちになるのかなと思っていたけど普通に、いつもと変わらずに入れた。でも、終わってから、いつもの疲れとちゃうなあと感じたね(笑い)」

 ただ、本当の戦いがこれからだということは百も承知だ。ウイニングボールのことを問われると、にやりと笑った。「わからない。どこかに行ってしまった。まあ、公式戦でもらいますよ」。長打力を誇るタレントがいるだけに、これまで攻撃に動きが少なかった。新監督は「動」の旗印を掲げて変革の1歩を踏み出した。【鈴木忠平】