有言実行の変化球攻めだ。阪神藤川球児投手(31)が13日、今年初めて打撃投手を務め、変化球主体に全42球を投げ、鳥谷、新井ら主力打者を安打性3本に抑えた。左打者にシュートも試投。昨年12月には統一球対策としてスライダーが有効だと力説し、火の玉ストレートだけに頼らない姿勢を示したが、言葉通りに「勝つための変化球攻め」を見せつけた。

 トレードマークの「火の玉ストレート」にこだわらない投げっぷりだった。藤川が白球の軌道を自在に操り、何度も変化球を投げ込んだ。新井への4球目。スライダーで打ち取った打球を機敏な動きで捕球。にやりと笑った。

 通常、主力がシーズンで初めて打撃投手を務める際は直球主体になることが多い。しかし、藤川は今季、優勝するための鉄則を貫いた。統一球導入1年目を終えた昨年12月には「スライダーを投げていれば、飛ばない。投げておけば、簡単に抑えられるという判断。それでは野球じゃないけど…」と話している。その通り、この日は全42球のうち、16球が変化球。スライダー、カーブ、フォークもちりばめ、バットの芯を外した。主力をわずか安打性の打球3本に抑えた。

 目立ったのはスライダーだけではない。平野にはシュートを立て続けに投げて幻惑。巧打者を「真っすぐが垂れた(遅い)ような球があって、それがシュートかなあ」と言わしめた。打っている打者すら球種を特定できず、手玉に取った。後方から見守った藪投手コーチも「いろんな球種を投げていた。後ろから見ていて楽しかった。(打者の)右も左も関係ない。シュートを使えればいいんじゃないか。シュートを投げなくても抑えられるけど、幅は広がる」と話す。公式戦で用いないシュートが武器になれば、投球のバリエーションは限りなく広がる。

 この日は「フォークの神様」と称された元中日の杉下茂氏が訪問。登板後にアドバイスも受けた。

 藤川

 (調整は)いつも通りです。(杉下氏とは)毎年、この時期にお会いしている。キャンプの楽しみになっている。いい言葉ももらったし、ためになりました。課題に取り組んでいますから。

 球筋を曲げても、ポリシーは曲げない。リリーフエースにとって、開幕への道のりは真っすぐ伸びている。【酒井俊作】

 ◆阪神藤川の主な球種

 150キロ超の直球が主体となり、フォークも多投。スライダーの軌道に似たカーブを、カウントを整えるために用いるのが基本的な投球スタイル。吉田バッテリーコーチは「シュートも昔は使っていた球種」と話す。近年は公式戦でシュートを投げていない。