<オープン戦:巨人1-0阪神>◇19日◇沖縄セルラー那覇

 「8回の男」、そしてGキラーは健在だ!

 阪神榎田大樹投手(25)が初実戦となる巨人戦で1回を完璧に抑えた。昨季主戦場とした8回に登板し、わずか9球で3者凡退。今季もセットアッパーを任されることが濃厚な左腕。エノキは2年目も頼りになる!

 榎田劇場は沖縄の曇り空の下、一瞬でハッピーエンドを迎えた。汗をかく間もなく、スタスタとマウンドを下りる。球場を埋めた1万6264人の観客は盛り上がる間もなかった。

 榎田

 前回のシート打撃登板よりは良かったと思います。真っすぐは自分としては、まだまだ。この間よりは良かったですけど。

 それでも反省だ。シート打撃登板から中1日で12年初実戦。昨季主戦場とした8回に出番が来た。先頭の9番藤村は内角直球で詰まらせて二ゴロ。1番亀井は内寄り直球で再び二ゴロ。2番松本哲は外角低めに逃げるスライダーに引っかけさせ、またもや二ゴロに仕留めた。3者凡退に費やした球数はわずかに9。「変化球で打ち取れたのは良かった。まずまずですが…」。いくら周囲が褒めたたえようと、苦笑いの榎田は首を縦には振らない。

 周りに流されない強さがある。あえて自らに関する報道、情報を耳にいれないようにしている。「あまり気にしてはいけないなと思って。サヨナラ打を浴びた時からですね」。1年目の昨季、5月28日楽天戦(Kスタ宮城)の10回裏、横川にサヨナラ打を浴びた。普段は決して自分を見失わない男も、さすがに周囲の目が気になりそうになった。これが転機となり、今は必要以上に報道をチェックせず、地に足をつけている。

 昨季は中継ぎとしてフル回転。オフは先発転向プランも浮上したが、心がブレることはなかった。昨春と同様に先発、救援のどちらにも対応できる調整を継続した。現時点ではセットアッパーを任させることが濃厚となっている。昨季巨人戦は11試合登板で防御率1・59。12年も頼もしいGキラーは健在だ。

 榎田

 ここから上げていかないといけない。

 どこまでも冷静な2年目左腕。地元・鹿児島から駆けつけた両親も見守る中、貫禄の投球。G瞬殺劇は12年サクセスロードの序章に過ぎない。【佐井陽介】