西武から移籍した巨人石井義人内野手(33)が「仕事人」となった。22日、アジアSBのLG戦(セルラー)に5番一塁で対外試合初先発。初回2死二、三塁。「とにかく自分で終わらせない」と、カウント1-1からの外角直球134キロを完璧に捉え、中前に先制の2点適時打を放った。4-4の7回には、2死三塁から内角135キロ直球を振り抜き、適時二塁打で試合を決めた。「自分の仕事は打つこと。少しは仕事ができたかな」と照れた。

 仕事人は、打席内で投手寄りギリギリに立っていた。一般的に、少しでも長くボールを見るために捕手寄りに立つことが多い。石井は違う。「真っすぐは自信がある。だから変化球を曲がる前に拾う。最悪ファウルにして、甘い球を待ち続ける。その方が打てる確率が上がるからね」。この職人技は、戦力外通告を受けてすぐに巨人が目を付けたほどの卓越した打撃技術にスイングスピード、「ボールを振らないのが持ち味」と自負する選球眼があるからこそ。この位置に立つのは、球界でも日本ハム二岡ら数えるほどだ。

 09年に打率3割をマークしたほどの高い技術と好調を維持できれば、代打の1番手はもちろん、交流戦での指名打者、主力不調時の先発起用と打線の選択肢は広がる。原監督は「彼にとってプラスであると同時にチームにも大きなプラスの影響を与える。(適時打)2本だっけ?

 たいしたものです」と目を細めた。

 試合後、「代打なら結果、先発ならチャンスメークと走者をかえす。きっちり仕事ができたら」と話すと、居残り特打へと向かった。「1度死んだ身」との思いで移籍してきた石井は、まばゆい大型補強の中でも、自らの輝きをきらりと放っていた。【浜本卓也】