<オープン戦:ソフトバンク4-3ロッテ>◇4日◇福岡ヤフードーム

 「首位打者に金棒」の10割バットだ。ソフトバンク内川聖一外野手(29)が、新バットで今季1号を放った。6回にロッテ古谷から左中間中段に突き刺す完璧弾。キャンプから試している通算4256安打の「ピート・ローズ型」バットで放った。新バットではオープン戦3打席3安打の10割で、昨季首位打者が新たな武器に好感触を得た。

 感触にしびれた。ビリビリではなく、じーんと。6回、先頭で打席に入った内川が、オープン戦チーム1号を放った。ライナー性で左翼席中段まで運ぶ完璧な弾道。「完璧ですね。もったいない。シーズンにとっておきたい、気持ちいいホームラン」。弾道を、手に残った感触を思い返すほど、いい手応えだった。

 “新相棒”との共同作業だ。オフに、契約するミズノ社に発注した新バット。それは、メジャー通算4256安打を記録したピート・ローズ型だ。グリップエンドがないのが特徴で、オフにミズノ社を訪れ、実際手にしたときにビビッときた。「運命のバットに出会ったかも」と言ったほど、瞬間的にほれ込んだ。「運命の出会い」からキャンプでデートを重ね、実戦へ。オープン戦で3打席3安打の好結果をたたき出す。

 相性抜群の“新相棒”との愛情は深まり、悩みも出てきた。首位打者を獲得した昨年の相棒との選択だ。オープン戦では併用して使っている。「迷う材料ではありますね。(どちらを使うか)開幕まで決めきれないかもしれない」。形に加え、長さも33・5インチから34・5インチへと1インチ(2・54センチ)新バットが長い。内川は「振った感じはいい。でもバットによって好不調になりたくないので、どっちも使えるようにしたい」と開幕へのテーマを設定した。

 昨季のMVP男が、さらに進化を求める。その姿勢から放った1発を秋山監督も評価した。「完璧な1発だね。調子いいよ。さすがだね」。内川も首脳陣から求められる仕事を理解する。昨季日本一チームも、主力の大量流出で生まれ変わらなければならない。その状況を把握し「野手が点を取ることで、若い投手を育てる。(今季は)打者が頑張るのが、すごく大事かな」と言った。

 この日、引退セレモニーを行った柴原から引き継いだ背番号1は、打線の柱の風格を漂わす。「打者は確率の勝負。チームの役に立つ場面で、確率の高い打撃をしたい」。“新相棒”への手応えで、昨季12本塁打からの上積みの期待も膨らむ。連続日本一へのスタートを切る3・30開幕へ、内川の態勢は早くも整った。