<ウエスタン・リーグ:ソフトバンク16-2阪神>◇11日◇雁の巣

 出たぞ!

 ハヤタ!

 阪神のドラフト1位伊藤隼太外野手(23=慶大)が、プロ1号ソロを放った。大敗の中、光る一撃。ファームで鍛え上げ、近い将来、1軍でこんな当たりを見ることを虎党は待っている。

 雁の巣球場は、甲子園や鳴尾浜と同様、右から左への強い風が吹く。この試合でもその影響で野手が落球する場面もあった。だが、そんな逆風もなんの。完璧に右翼席へたたき込んだ。伊藤隼、会心の1号だ。

 「あの打席に限ってはよかったです。久しぶりの感触でしたね。久々です。打ったのはインコースの真っすぐ。真っすぐを待っていて、という感じでした」

 ウエスタン公式戦83打席目で出た待望の一発。笑顔というよりは、さすがにホッとした様子で話した。

 「振り抜けたな。待っている真っすぐが来れば打つんや。その前の打席でアウトコースを狙っていて、内に投げられてバットを折られていたやろ。ああいうところやな」

 はまれば持っていける力はある。あとは対応能力。立石2軍打撃コーチはさらにレベルアップを期待し、そう説明した。

 試合前、打撃練習が終わってもネット裏の窓を鏡にして、伊藤隼は黙々と素振りを続けていた。ブンブンとよく聞こえるので「いい音やん」と声を掛けた。

 「絶好調です。絶好調。気持ちはね!」。めずらしく冗談を口にし、ニヤリとしながら返してきた。ファームの福岡遠征はこれが2度目。周囲も「真面目」と口をそろえる男だが、前回は初めてもつ鍋を食べるなどリラックスする様子も出てきたようだ。

 大きな期待を受けての開幕1軍も1カードだけで降格。2軍に定着しているが、本当の意味でプロに慣れてくれば、ルーキーの逆襲が始まる可能性はある。