<楽天1-3阪神>◇5日◇Kスタ宮城

 6月初勝利は、しぶとくしぶとく、粘った先にやってきた。1-1同点の9回1死から楽天は新守護神青山で抑えにかかる。マートン、先発復帰の新井が四球でつなぎ、クレイグ・ブラゼル内野手(32)が低めに食らいついた。右前に弾むタイムリーが決勝点。波に乗れない交流戦、そろって不振に苦しんだ5~7番トリオの渋~い働きで反攻の道が開けた。

 仲間がつないでくれた。バトンを落とす訳にはいかない。ブラゼルはコンパクトに低めのフォークを振り抜いた。ライナーを右翼線に弾ませ、仙台の夜に虎党の叫び声をとどろかせる。熱い思いを胸に秘め、熱戦に終止符を打った。

 ブラゼル

 勝ったことがすべて。どんな形でも1本出て良かったよ。

 1-1同点の9回表1死からドラマは始まった。絶不調からはい上がった5番マートンが、フルカウントから四球をゲット。不振に苦しみながらも、4試合ぶりに先発復帰した6番新井も、フルカウントから際どいボールに、グッとこらえた。2者連続四球で1死一、二塁。ここで楽天守護神青山から決勝打を決めた。

 ブラゼル

 こういう形で勇気づけられたと思う。みんなはタイガースファンじゃなかったと思うけどね。それは冗談(笑い)。大変な経験をした子供たちと出会って交流を重ねて、いい形で勝利に貢献できた。

 札幌からの移動日だった前日4日、東日本大震災で被災した宮城・岩沼市立玉浦小を訪問。給食を共にするクラスもあった。尊敬する選手は?

 「巨人小笠原選手だね」。朝は何してるんですか?

 「目覚めは良くない方だから、iPadを1時間ぐらい見て起きるんだ」。趣味は?

 「ハンティングだよ」。子供たちの質問攻めを喜び、体育館では全校生徒に「巨人ファンは出て行ってくれ!」とジョークで爆笑させる場面も。エネルギーを与えるつもりが、逆に注入された。恩返しがしたかった。

 ブラゼル

 あの時のことは忘れないよ。

 米国で地震に遭ったことはないと言う。西武に所属していた来日1年目の08年。遠征先の仙台で初めて大きな地震を経験し、恐怖を覚えた。「それ以来、東京でも震えると、すぐに分かるようになった」。だからあれだけの大震災を受けながら、笑顔で復興を目指す人々を心から尊敬する。昨年は被災地に大量の毛布を送った。東北に楽天ファンが多いことは百も承知だが、プレーでも気持ちを示せて満足げだ。

 ブラゼル

 これからもチームの勝利に貢献するスイングをするだけだよ。

 虎の連敗を2で止め、仙台の虎党、そして小さな友人たちを喜ばせることができた。ブラゼルにとって、かけがえのない夜になった。【佐井陽介】