<オールスターゲーム:全パ6-2全セ>◇第3戦◇23日◇盛岡

 球宴でヒットパレードだ。阪神平野恵一内野手(33)が球宴3試合連続安打を放った。岩手県営野球場で行われた第3戦に、全セの「2番二塁」でスタメン出場。3回の第2打席、楽天塩見から中前打を放ち、3試合すべてで「H」ランプをともし、球宴での打率は5割ジャスト。勢いそのまま、明日25日から始まる後半戦に突入する。

 後半戦に希望を抱かせる弾道だった。全セの2番で先発出場した平野がフルに持ち味を発揮した。3回2死で迎えた第2打席。楽天塩見の初球を迷わずに振り抜く。141キロの外角高め直球をライナーで中前へ。球宴3戦連続の安打を奏で、全身で感謝を表した。

 平野

 いつも言っているけど、素晴らしいメンバーのなかでプレーできて本当に幸せ。選んでいただいたファンの方に感謝したい。楽しむ余裕なんてなかったです。幸せをかみしめて、いいプレーをするだけ。

 不振脱出を予感させる打ちっぷりだ。前半戦終盤は絶不調に陥った。7月は5試合連続無安打など、スタメン落ちの屈辱も味わった。月間で48打数4安打、打率8分3厘…。どん底のチームと歩調を合わせ、不動のリードオフマンも地獄を見ていた。

 だが、球宴に入ってから好転する。20日の第1戦(京セラドーム大阪)では日本ハム斎藤から左前打。21日の第2戦(松山)は代打で登場。セーフティーバントを決めて安打を稼ぐと、この日は鮮やかなクリーンヒットだ。オールスター全3試合で安打を放ったのは全セではヤクルト・バレンティンと2人だけだ。試合後のセレモニーでは巨人長野とリラックスした表情で談笑。緊張はほぐれ、野球を楽しみ、本来の躍動感を取り戻していた。

 東日本大震災からの復興を目指し、平野もまた全セの一員として全力を尽くした。東北は縁のある場所だ。プロを目指していた東海大時代。01年、日米大学野球のメンバーに選出され、秋田で試合に臨んでいた。「東北を回りましたからね」。盛岡ではオリックス時代の05年7月12日楽天戦でプレー。中前打をマークするなど、なじみのある場所だ。みちのくへの思いを持ち、ハッスルした。

 試合後は口を真一文字に結び、厳しい表情を崩さなかった。「チームのため、ファンのため、全力で頑張ります」。169センチの背中に闘争心があふれていた。悔しさをぶつけるべく、今日24日に名古屋へ。まずは後半戦開幕(25日・中日戦、ナゴヤドーム)で全力を出し切る。【酒井俊作】