<巨人0-2中日>7月31日◇東京ドーム

 中日期待の左腕が巨人の独走に待ったをかけた。10年のドラフト1位・大野雄大投手(23)が7回途中まで3安打無失点に抑え、今季2勝目、巨人戦初勝利を挙げた。140キロ台中盤の速球と変化球で的を絞らせない見事な投球。昨季プロ初登板で4回7失点KOを食らった相手に成長ぶりをみせつけた。中日は東京ドームで今季初勝利をマークし、巨人とのゲーム差を4・5に縮めた。

 少々のコントロールミスは気にしなかった。大野は力のある140キロ台中盤の速球で押し、効果的にスライダーやフォークを織り交ぜ、巨人の打者を次々と打ち取っていく。4回1死から寺内に左前打を許すまでは無安打投球。7回1死から二塁打と四球で救援を仰ぐも、被安打3、7奪三振の堂々たる内容で、6連勝中の巨人の勢いを見事に止めた。

 「逆球ばかりで谷繁さんに迷惑をかけた。ただ、細かいコントロールよりも、力で抑えるのが自分のピッチング。それが出せた」。あの悔しさを忘れていなかった。昨年10月14日にプロ初登板を果たしたが、4回7失点でKOされた。厳しさを教えられた相手が巨人で、場所は東京ドーム。そして相手投手が、同じ黄金世代でその年の新人王を獲得した沢村だった。燃えるものがあった。

 「正直、去年も投げ合って負けたんで意識はしてました。今日は何とか勝てて良かった」。スターがそろう同世代の中で最も意識するのが沢村。入団時には「彼がセ・リーグにいてくれてよかった」と話したほどだ。7月11日の阪神戦でプロ初勝利。自信をつけて、因縁の相手に成長の跡を披露した。権藤投手コーチは「力もある。(巨人は)スライダー、フォークも合ってなかった。変化球は前回70点か80点だったけど、今回は100点」とほめた。

 今年1月に先輩吉見と福岡県内で合同自主トレを行った。そこにいたのがオリオールズに移籍が決まった先輩左腕チェン。大野はあこがれの投手を質問攻めにし、チェンから「フィニッシュのときに突っ立つんじゃなくて腕を巻き込まないと」と助言を授かった。そこから腕を体に巻き付けるような、しなやかなフォームを意識するようになったという。

 大野の快投で、東京ドームでは今季7試合目で初勝利。関東地区の連敗も15で止まった。「ありがとうございます」と、上機嫌の高木監督は「良いも良いも、あれだけ良いとは思わんかった。大野に尽きます」と絶賛した。ひょっとしたら、2年目左腕が逆転Vの使者になるかもしれない。【桝井聡】<大野雄大(おおの・ゆうだい)アラカルト>

 ◆生まれ

 1988年(昭63)9月26日、京都市生まれ。京都外大西で2年夏、3年春に甲子園出場。京滋大学リーグの佛教大では3年春秋、4年春にMVPとベストナイン。10年ドラフト1位指名で中日入り。今季推定年俸1350万円。183センチ、78キロ。左投げ左打ち。

 ◆母親思い

 女手一つで育てた母早苗さんの負担を減らすため、高卒後は社会人で野球を続けたいとも。大学では練習後、深夜のガソリンスタンドでアルバイトもした。

 ◆東京ドームに縁?

 3、4年春の大学選手権は全4試合東京ドームで試合。4年時の1回戦東北福祉大戦で自己最速タイ151キロを計測。大学4年夏に左肩を痛めた影響で、昨年10月14日巨人戦(東京ドーム)でプロ初登板。マジック2と優勝もかかった試合で先発、4回9安打7失点で敗戦投手。当時の落合監督は「投げられるようになっただけで十分だ」。

 ◆初勝利

 今季初登板となった12年7月11日阪神戦(甲子園)で初勝利。