金本に続き、また1人…。03年、05年に阪神をリーグ優勝に導いたロッテ今岡誠内野手兼任コーチ(38)が今季限りで現役引退することが17日、明らかになった。03年に首位打者、05年打点王に輝くなど、猛虎の黄金時代を支えてきた好打者が、完全燃焼でユニホームを脱ぐ。

 また1人、猛虎の黄金時代を築いた名プレーヤーがバットを置く。ロッテ今岡がユニホームを脱ぐ決意を固めた。今季は兼任コーチに就いたが、当初から球団と話し合い、試合に出場せずに若手の指導に専念するスタンスだった。プレーヤーとしての引き際を悟っていた。

 「去年も戦力として代打要員でも上(1軍)にいなかった。そういう面でも心の整理はついていた。結果が出なければ、やりたくてもできない。今年で一区切りという思いがあった」

 阪神では03年に1番打者で打率3割4分をマーク。05年は5番を打ち、ポイントゲッターとして147打点を記録した。12日に現役引退を表明したばかりの金本らと03、05年のリーグ優勝の立役者になった。鉄人と歩んだ道のりは今岡の財産になった。

 プロ入り当初から理想像があった。「プロは一匹おおかみで群れずに、無駄口をたたかず、己の目標に向かっていく」。孤高のプレーヤーとして一時代を築いた。そんな全盛期のころ、納会で金本から諭されたことがある。「イマハン(今岡)な。給料稼いで上に立つ人間はな。こうやって若い選手とメシを食べて、いろんな話をしたる。それも先輩の仕事やで」。その後、若手と密に意思疎通を図るようになった。一流としての自覚、そして人間としての深みを学んだ瞬間だった。今岡は言う。

 「優勝した03、05年は絶対に忘れない。これは誇りだし、金本さんにものすごく影響を受けて、シーズン中もいろんなことを教えてくれた。ロッテに来てからも、ものすごく選手と交流した。これも金本さんの影響だね。言葉は間違っているかもしれないけど、金本さんと一緒の年に引退できるのはうれしい」

 09年、愛する阪神を戦力外になり、新天地ロッテで恵まれた日々を過ごした。「阪神で終わっていたら、悔いが残った。この3年間はものすごく財産になった。日本一になって、優勝もして、タイトルもとって、指導者の目も持っている。現役中にこれだけ終えていて達成感というより、また夢と希望を持てる」。指導者としての視点も養い、野球人として経験値を高めた。

 「09年のとき、嫁が『やめないで』と言っていなかったら、やめていたかもしれん。すべて人との縁。人から影響を受けて、いろいろ積み重ねていくのかな」

 人との絆とともに年輪を重ねていく。梨恵夫人、長男稜さんら家族の支えも今岡のパワーだった。指導者として再びユニホームを着る夢もあるが、今後は野球評論家としてグラウンドの外から野球を学ぶ。一本気に駆け抜けた野球道。勝負師が歩む先は、まだまだ真っすぐに延びている。