<コナミ日本シリーズ2012:日本ハム7-3巨人>◇第3戦◇30日◇札幌ドーム

 左手の激痛も、勝利の喜びがあれば、耐えられる。日本ハム中田翔内野手(23)が、待望の日本シリーズ初安打。6回、この試合、初めて得点圏に走者を置いて打席に入った。2死三塁。2球で追い込まれたが、その後、1球粘って、4球目が暴投に。4番の“威圧感”で6点目をアシストすると、その後、カウント2ボール2ストライクからの6球目、外のカーブを拾った。初出場の09年から数えてシリーズ通算12打席目で放った一打は、左前へポトリと落ちた。「ラッキーなヒット。自分のスイングは出来なかったけど、チームが勝てて良かった」と、ホッとした表情を浮かべた。

 レギュラーシーズンから数えて150試合目。何事もなかったかのように「4番左翼」でスタメン出場したが、打撃で最も重要になる左手は悲鳴を上げていた。28日の第2戦、第1打席で、巨人沢村が投げた149キロのシュートを左手甲に受けていたからだ。バットを握れないほど腫れ上がり、グローブの着脱もままならない。痛み止めも効かなかった。この日の練習前には、巨人沢村から謝罪された。試合前練習に参加したものの、打撃練習では36スイングで柵越えは2本止まり。「考えんとこうと思っても、本能的にかばおうとしてしまう。フルスイングするには手首を返すので、どうしても痛みが走る」。打ち終わるとロッカールームへ引き揚げ、アイシング治療を受けながら試合開始を待った。

 中田の状態について、トレーナーから報告を受けた栗山監督は「聞かないことにした」と耳をふさぎ、強行出場を決断。それだけに「自分なりの形でヒットが出た」と、中田の1本を喜んだ。中田も「出る以上、弱音は吐けない。そのつもりで打席に立った」と大きく息をついた。痛みを感じさせない鉄人ぶりで、4番の座を守った。【中島宙恵】