来年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表候補34人が4日、発表され、阪神から能見篤史投手(33)、鳥谷敬内野手(31)が選ばれた。

 阪神投手陣の大黒柱が世界へと飛び出す。サウスポー能見が来年3月、プロ入り初めて日の丸のユニホームに身を包む。WBC3連覇を目指す険しい戦い。重圧、そして使命感があるからこそ球団広報に託したコメントにも責任感が漂う。

 「選出されて、びっくりしました。プロでは初めての日本代表になりますが全力で日本の勝利のためにプレーさせていただきます」

 浩二ジャパンでは、セットアッパーとしての起用が濃厚だ。今季は172三振を奪い、初めて奪三振王のタイトルに輝いた。肝心な局面を迎え、三振に仕留められる力量は貴重。ロングリリーフもできることから、リリーフとして計算されている模様。今季もシーズン終盤に2試合、救援登板して狙い通りに三振を奪っている。球威抜群の直球を軸にフォーク、チェンジアップをちりばめる投球術は世界の脅威になる。

 能見にとって、WBCは大きな発奮材料になる。大阪ガス時代の04年7月にはキューバと対戦するアテネ五輪日本代表壮行試合にも参加。社会人参加は長嶋監督が要望したもので、登板機会こそなかったが、代表のユニホームに袖を通していた。ミスター推薦の「有望株」が成長し、ようやく世界の舞台で力を見せるチャンスを得た。

 3連覇を狙う戦いは過去2回よりも高く険しい。メジャー組が不参加で、オール国内のチーム編成。「守り勝つ」野球を推進するだけに、能見に寄せられる期待も大きい。巻き返しを図る阪神にとっては、開幕前に投手陣のリーダー格・能見が不在なら、不安材料でもある。それでも、南球団社長は「大事な時期で本人の意思もあるが出場ならば、もちろん協力する」と快く送り出す。

 阪神では、藤川のメジャー挑戦で空位となったストッパーの最右翼に挙がっており、WBCは格好の予行演習にもなる。勝敗を左右する1イニングをいかに抑えるか。タフな精神力を問われる特殊な役回りだけに、世界の大舞台は格好のシミュレーションにもなりそうだ。