速すぎっ!

 の即投げだ。ソフトバンクの新外国人ヴィセンテ・パディーヤ投手(35=レッドソックス)が7日、チームに合流して即日ブルペン入りした。いきなり捕手を座らせ、変化球も交えて40球。しかも一番乗りというあまりに意外すぎる行動で、他球団007に肩すかしを食らわせた。

 午前11時、まだ他の投手がいないブルペンにニカラグアの剛腕はいた。パディーヤは軽くキャッチボールした前田翔ブルペン捕手に手で「座ってくれ」の合図を送る。おもむろに力を入れて投げ始めた。まずは直球を17球。続けてスローカーブ、スライダー、スプリットと、シンカー以外の全ての持ち球を披露。歩幅5歩分のコンパクトなフォームから、セットポジションも含め小気味よいテンポで全40球を投じた。

 「しっかり体を作りたいと思ったのでブルペンで投げた。マウンドの感触も確かめたかった。まだ全力で投げたわけじゃない」

 前日6日に宮崎入り。母国ニカラグアからヒューストン、ロサンゼルスと米国2カ所を経由し、羽田空港から1日半かけて到着したばかり。「まだ時差ぼけがある」という中でウオーミングアップとノックを終え、いきなりブルペンで投げた。マイペース調整が目立つこれまでの助っ人とは違い、異例の行動に出た。

 これには他球団も意表を突かれた。直後のブルペンには西武のケビン・ホッジス渉外担当(元ヤクルト、楽天)が姿を現し「もう投げたのか?」とびっくり。ロッテ高木晃次スコアラーも「昨日来たばかりだし投げないと思っていた」。郭泰源投手コーチでさえ「予想外だよ…。投げるにしても立ち投げだと思ってた。まあ、やる気あるんじゃない」と目を丸くした。

 実は来日2週間前にはニカラグア代表チームで登板するなど、母国で調整は積んできている。キャンプ合流の遅れを、わずか数時間で埋めて見せた。

 メジャー通算108勝。強気な投球で06年には17死球で「死球王」となった。この日のブルペンでは右打者の打席付近めがけ、内角攻めを想定したようなボールも数球あった。

 「日本も米国も野球は野球。同じように成功できると信じている」

 腕っぷしが強そうなワイルドな顔つきで、不敵な笑みを浮かべた。先手必勝は「勝負の鉄則」。早すぎる初ブルペンで、ライバル球団に先制パンチを見舞った。【大池和幸】

 ◆ヴィセンテ・パディーヤ

 1977年9月27日、ニカラグア生まれ。99年にダイヤモンドバックスでメジャーデビュー。フィリーズ移籍後の02年に14勝で球宴出場。03年も14勝。レンジャーズ移籍後、06年に自己最多の15勝。昨季は救援として56試合に登板。直球は150キロ前後で、カーブ、シンカー、スライダー、チェンジアップ、スローカーブと多彩。185センチ、104キロ。右投げ右打ち。