日本ハムのドラフト1位大谷翔平投手(18=花巻東)が10日、沖縄・国頭キャンプで3度目のブルペン入りし、初めて捕手を座らせて32球を投げた。迫力ある直球で周囲のファンからどよめきが起こるなど、充実した内容。視察に訪れていた、元メジャーリーガーでメジャーのスカウトを20年間務めた日本ハムのアル・ハーグシャイマー駐米スカウト(58)も、素質の高さを絶賛。打撃面でも、メジャー通算383本塁打のラリー・ウォーカーの姿をダブらせた。

 カーブの直後、28球目だった。大谷の右手を離れた白球は、うなりをあげながら捕手のミットにおさまった。「おおぉ」。“満員御礼”となったブルペンの観覧客から、思わず感嘆の声がもれた。「しっかりといいボールがいきました。いいコースでしたね。それが増えればいいなと思います」。本人も納得の、最高のストレート。マスクをかぶった渡部ブルペン捕手は「150キロ出ていたんじゃないか…」と驚きの声を上げた。

 今キャンプ3度目のブルペン入りで、初めて捕手を座らせた。初球はカーブ。「大勢の人に見られていたので、力を抜くために」。しっかりとした意図を持って、組み立てた。スライダーも交えながら、予定の30球が近づくと、球の勢いは増した。「後半にしっかり投げられるように。100球投げたら、100球目にいいストレートを投げられるようにしたいです」。投球前に立てたテーマに従って、密度の濃い投球練習を消化した。最後は“おかわり”を要求し、予定を2球オーバーした。

 素質の高さにほれ込んだのが、来日中の駐米スカウト、ハーグシャイマー氏。現役時代はジャイアンツやロイヤルズなどでプレーしメジャー5勝。引退後はパドレスやタイガースなどでスカウトを務め、数々のメジャーリーガーたちを見てきた。この日のブルペンを見届け「腕の振りの速さが印象に残った。真っすぐの勢いがあり、スライダーのキレも目を見張るものがある」と、18歳の日本人投手が秘めるポテンシャルに驚いた。

 さらに、打者としての評価も高い。ハーグシャイマー氏は前日9日にはフリー打撃を視察。「トップの作り方、バットへの力の伝え方、フォロースルーの形と、1つ1つの動きが理にかなった連続性を持っている。いろいろなコースに合わせることができるだろう」と技術の高さを感じ取った。「頭によぎったのはラリー・ウォーカー」。メジャー通算383本塁打で、首位打者に3度も輝いている好打者の姿をダブらせた。

 今日11日からはケース打撃など、実戦的なメニューが増えてくる。「(投球は)細かいばらつきがあった。(打撃も)よかったり悪かったりなので、しっかり調整したいです」。二刀流挑戦も、いよいよ本格化する。【本間翼】

 ◆ラリー・ウォーカー

 1966年12月1日、カナダ・メイプルリッジ出身。84年にカナダ代表のユースチームからドラフト外でエクスポズへ入団し、89年に外野手でメジャーデビュー。90年に球団新人記録の19本塁打を放ち、92年にはオールスター初出場、ゴールドグラブ賞、シルバースラッガー賞獲得。95年にFAでロッキーズに移籍し97年にカナダ出身者初のMVP、04年には同じく初の2000安打を達成した。04年8月にカージナルスへ移籍し、05年限りで現役引退。首位打者3度(98、99、01年)本塁打王1度(97年)。メジャー通算1988試合、打率3割1分3厘、383本塁打、1311打点。191センチ、98キロ。右投げ左打ち。現WBCカナダ代表コーチ。