<日本ハム4-3オリックス>◇28日◇札幌ドーム

 日本ハムが「アブノミクス」効果で、借金完済に王手をかけた。キューバ出身の新外国人ミチェル・アブレイユ内野手(34)の4試合連発の3ランが決め手となり、4連勝を飾った。3回に1点を先制し、なおも1死二、三塁で左中間へキング独走の9号3ランをかけた。年俸2000万円の格安テスト入団助っ人が、大ブレーク。既に年俸換算で、本塁打1本当たりの単価は約220万円と激安だ。最大5あった負け越しも残り1まで回復、“ハム価”も3位に浮上した。

 超価格下落傾向の一発が、また飛び出した。ハングリーな年俸2000万円助っ人、アブちゃんだ。3回。1点を先制し、なおも1死二、三塁。オリックス西の真ん中に入ったスライダーを、力いっぱいバットに乗せた。左中間席へ一直線の4試合連続の3ラン。終わってみれば1点差逃げ切り、今季初の4連勝へ導く大仕事になった。ここ4戦で5本塁打に「フフッ」と含み笑いで、好調さの持続度は「分からないですね」と不敵だ。日本経済以上に、爆発ぶりの行く先が不透明なほど感触は抜群だ。

 経済効果抜群、日本ハムにとってまさに「アブノミクス」だ。出来高を度外視して年俸で単純換算すれば現在、本塁打1本当たり約220万円だ。今季のパ・リーグは楽天のA・ジョーンズとマギー、ソフトバンクのラヘアら高額年俸の助っ人勢が来日。開幕前の話題の的だったが、堂々とアブちゃんが9号でキングを独走している。パでの外国人選手の本塁打単価では現在最安値で、ただ1人だけ1000万円以下。セ・パを通じてもお買い得っぷりは、際だっている。

 太っ腹な強い決意で、海を渡ってきた。キューバ出身で、昨季まで2年間はメキシカン・リーグでプレー。代理人を通じ、日本ハムへ獲得を直訴。2月のキャンプでの入団テストの機会をつかんだ。来日する航空券は「自費でもいい」と懐を痛めるのも顧みず、探した新天地。ボロボロの使い込んだバッグに野球道具を詰め込み、沖縄・名護へ乗り込んだ。スパイクを携行し忘れ、パフォーマンス低下の危機に直面。しかも13インチ(約29・5センチ)の大きな足。代用品がなかったが、ちょうどケッペルと同サイズだった。無償レンタルで急場をしのぐ、ちゃっかりさでチャンスを生かし、今をときめいている。

 シビアな球団経営で有名な日本ハムは、外国人4人制が理想。ひと目ぼれした栗山監督の強い意向もあり「規制緩和」して、5人目の助っ人枠に滑り込んだ。同監督は「あれだけ本塁打を打つ打者がいると(中田)翔にとっても、いい効果になる」。若き主砲の刺激を高める「アブノミクス」にも期待した。最大借金5から、ついに1へ。アブちゃんの激安のアーチ攻勢に乗せられ、日本ハムがホクホクの夢の貯金生活へ突き進む。【高山通史】