<ソフトバンク3-1西武>◇1日◇ヤフオクドーム

 ただいま!

 ソフトバンク寺原隼人投手(29)が古巣復帰初勝利を手にした。完封こそ逃したが、8回1失点の堂々たる内容。ホークスでの白星は06年7月16日の日本ハム戦以来6年9カ月、2481日ぶり。チームを今季2度目の3連勝で勝率5割復帰に導いたFA右腕は、お立ち台で男泣きした。

 思わず、感極まった。寺原はお立ち台で「ただいま!」と第一声。勝利の喜びを語るうち、感情がこみ上げた。「チーム、ファン、家族のため、特に息子のために頑張りました…」。そこまで話すと、涙があふれ出た。7季ぶりに味わうソフトバンクでの白星は、最高だった。

 小学2年の長男に白星を届けるべく奮闘。3歳の長女が発熱のため観戦はできなかったが、パパの格好いい姿は届いたはずだ。8回1失点の力投。前回多投しすぎたツーシームを封印。最速150キロの直球を軸に、緩急で攻めた。「ファーストストライクを取れたので優位に運べた」。打者26人中21人の第1球がストライク。テンポよく、好調の西武打線を抑え込んだ。

 「7年前にここを出て、またこのユニホームで投げるなんて想像してなかった。でもいつか投げたい気持ちがあった」

 球団はFA加入の人的補償として、守護神馬原をオリックスへ渡した。皮肉にも自主トレを一緒にする先輩。1月11日。寺原の電話が鳴った。馬原だった。「びっくりする話があるぞ」。ちょうど休日ゴルフのメンバーを探していた。

 「誰か大物が来るんすか?」「もっとびっくりするぞ」「なんすか?」「オリックス行くの、おれなんよ。なっ、びっくりした?」。声の主はカラカラと笑っていた。「気にするな」と励ましてくれたが、いたずらな運命を招いて落ち込んだ。「馬原さんには一つ勝ったら電話しようと思っていた」。移籍2度目の先発で、いい報告ができる。

 かつて、福岡での5年間は16勝どまり。横浜、オリックスを経由し、たどり着いた古巣で成長した姿を披露した。「これが何試合も続かないといけない。もっと勝ってこそ意味がある」。次は順当なら8日オリックス戦が有力。「自分から『出ます』と言ったチーム。変なピッチングをしたくない」。背番号11の再出発から、チームは5月反攻を開始する。【大池和幸】