<中日3-1西武>◇26日◇ナゴヤドーム

 中日谷繁元信捕手(42)が、1000打点王手の一撃で6連敗を阻止した。同点の6回1死満塁で決勝の勝ち越し犠飛。プロ25年間で積み上げた通算打点を999とした。ヒーローインタビューでは、試合中に高木監督と大ゲンカした同じ竜党男性からのヤジに絶妙トークで切り返すなど、あらためて竜に谷繁ありを見せつけた。

 ヒーローインタビューを受けるヒーローに、一塁ベンチ上から思わぬヤジが飛んだ。「もっと盗塁刺せ!」。谷繁は怒るどころか笑顔で返した。「分かりました。今お客さんから盗塁刺せと言われたので、刺せるように頑張ります」。絶妙の切り返しにナゴヤドームがどっと沸いた。

 ヤジの主は7回の攻撃時、荒木に命じた犠打などを巡って高木監督に「辞めろ」などと迫り、指揮官も激しく応戦した男性だった。瞬間湯沸かし器の監督とは対照的に、司令塔は冷静だった。「こういうチーム状態なのでもっとヤジってください。それに僕も燃えますから」。ヤジ・リクエストまで出し、インタビューをまとめ切った。

 トーク以上に、バットで魅せた。同点にされた直後の6回1死満塁。十亀をとらえ、左翼へ勝ち越し犠飛を打ち上げた。6連敗を阻止する決勝点だ。

 「地味なヒーローだなあ。抜けたと思ったけど42歳の力を知りました」

 通算999打点目。18歳だった大洋時代の1年目、89年5月21日の阪神戦で池田親興から適時三塁打した初打点から、25年目の大台リーチとなった。

 「サヨナラで決めたらガッツポーズするでしょうけど、2000本と同じでピンと来ない。試合で勝つことの方がうれしい」

 勝利至上主義だからこそ、開幕からBクラスに沈み、竜党の気持ちは痛いほどわかる。「ふがいない試合をしている。ヤジってストレスを発散してくれればいい。借金7のチームが急にはよくならない。でも少しずつ返してよくしていきたい」。2度の日本一を知る男はネバーギブアップ。竜党の叫びを逆襲の力に変える。【松井清員】