<巨人4-2日本ハム>◇6日◇東京ドーム

 最高で~す!

 巨人が連夜の劇的な1発で3連勝を飾った。4番阿部慎之助捕手(34)が1点を追う8回2死二、三塁から、15号逆転3ランを放った。この回、先頭石井が名手大引の失策で塁に出ると、2死一、二塁から阿部の初球に重盗を成功させ、阿部の劇弾を呼び込んだ。これで貯金を11とし、セ・リーグ首位を死守した。

 次打者席で慎之助が、口を一文字に結んだ。1点を追う、8回2死二塁。相手バッテリーは、3番坂本を歩かせ、勝負を挑んできた。「きた、きた、きたー!

 って感じ」。4番のプライドを傷つけられたという感情は、一切なかった。ただ、純粋に勝負へのスイッチが入った。「向こうも戦略的なものがある。僕も左(投手)は打てていないので」と、高まる興奮を謙虚さで抑えながら、打席に向かった。

 昨季の日本シリーズ第6戦で決勝打を放った対戦相手の日本ハム石井とのガチンコ対決。初球に重盗が決まり、2死二、三塁と好機が広がる。カウント2ボール2ストライクからの6球目だった。「追い込まれてからは、低めを捨てようと思っていたけど、体が勝手に反応した」と、内角低めの142キロのシュートを完璧に捉えた。バットを投げ捨てたと同時に飛び出したガッツポーズ。「打った感触?

 なかったです。それぐらい会心でした」と、とびっきりの慎之助スマイルで振り返った。

 バットの“衣替え”でコンパクトかつ、豪快なスイングを可能にした。開幕直後は940グラム前後のバットを使用していたが「だんだん疲れが出てくる時期だから」と、6月に入ってからは910グラム前後にシフトチェンジ。ベテランならではの“季節感”を巧みに使いこなした。さらに「よりコンパクトに振れるように」と、勝敗を決めた打席は、指2本分バットを短く持って確実性を重視した。

 スタンド最前列には、今日7日に58回目の誕生日を迎える父東司さんの姿もあった。普段から「親を大事にする。先祖を大事にするというのが、わが家の家訓だから」と話す、孝行息子が、目の前でビッグなプレゼントを用意した。お立ち台の息子を立ち上がって見つめた東司さんは「本当に最高です。いいものを見せてもらいました」と、目を輝かせた。

 ベンチの原監督も興奮を隠せなかった。「鳥肌が立ちました。前の打者が敬遠で4番勝負。ものの見事にはね返した。プロの勝負の中でしびれる素晴らしい勝負でした」と、たたえた。「途中まで3安打しか打てなくても粘っていれば、こういうこともある。それを今日、みんなが感じたはず。交流戦の優勝も全勝すれば可能性がある。まだ諦めていない」と慎之助。主将が、巨人に再び勢いをもたらした。【為田聡史】

 ▼阿部が8回に逆転の15号3ラン。阿部の逆転打は4月7日中日戦本塁打、同16日阪神戦本塁打、5月17日西武戦本塁打、5月26日オリックス戦二塁打に次いで早くも今季5本目。シーズン5本の逆転打、シーズン4本の逆転本塁打は、ともにプロ入り最多となった。今季、阿部の殊勲安打の内訳は先制4本、同点2本、勝ち越し2本、逆転5本。昨年は先制打が16本で最多だったが、今季の阿部は一気にひっくり返した逆転打が多い。