<ヤクルト4-9楽天>◇6日◇神宮

 一撃必殺マギー弾で、楽天が一夜にして交流戦首位に返り咲いた。0-2の4回、ケーシー・マギー内野手(30)がヤクルト石川から逆転の12号3ランを放った。3回に先発則本が2失点した直後だっただけに、流れを取り戻す効果的な1発となった。何事にも全力のM砲が、勝利を呼び込んだ。

 これぞ、一撃必殺だ。2点を追う4回2死一、二塁。マギーは「(塁上の)聖沢とAJ(ジョーンズ)をかえそう」の思いで、ヤクルト石川に立ち向かった。初球カットボールを振り抜くと、「感触はあったね」。打った瞬間に分かる高い軌道で、左中間席に放り込んだ。直前の3回に先発則本が2失点。制球が定まっていなかっただけに、貴重な逆転3ランとなった。

 試合後、歓声に手を振って応えた。攻守に全力プレーで、着実にファンを増やしている。文化、習慣が異なる異国生活だが「関係ないね。毎朝起きて、今日も野球という仕事に向け準備する。スタンスは変わらないよ」と平然と言った。アメリカでも、日本でも、やることは同じ。その哲学を、少年に伝えたかった。

 開幕直後、4月5日のロッテ戦(Kスタ宮城)だった。試合前に子どもたちが体操をするイベントがあった。マギーは、参加者の中に車椅子に乗った男の子を見つけた。一生懸命、体を動かす姿を見た。すぐにベンチ裏に下がり、球団職員に、そっと自分のサインボールを託した。「あの子にあげてほしい」。通訳に頼み、日本語でメッセージも添えた。

 「何でも全力で!!

 君はやれば出来る」

 その子は、ニッコリ笑って受け取ったという。だが直後のアップ中、マギーはアクシデントに見舞われた。イベントが終わったグラウンドの人工芝に足を取られ転倒。しばらく動けなかった。周囲の心配を制すようにベンチに戻ると、テーピングで右の足首をグルグル巻きにした。「大丈夫だ」。その試合、2安打1打点で勝利に貢献。痛みを忘れ、全力だった。男の子への言葉を体現した。

 この日、初球を本塁打にできた秘訣(ひけつ)を問われると「しっかり打つ準備をするだけ」とサラリと答えた。調子が落ちれば、田代打撃コーチを質問攻めにするのが常。勝利を呼ぶ一振りには、全力の準備があった。【古川真弥】