<西武1-0楽天>◇26日◇西武ドーム

 いつ変わるの?

 今でしょ。西武野上亮磨投手(26)が約2カ月ぶりに勝った。8回無失点の好投で、4月24日ロッテ戦以来の4勝目を挙げた。好投しても勝ちがつかない試合が続き、2軍落ちした期間に習得したフォークが効果を発揮。前日22安打を許した楽天打線を、わずか2安打に封じこめた。変化を求めてさまざまな行動に移し、悪い流れを変えてみせた。

 またか。8回で降板が決まっていた野上は、ベンチで祈った。あと1アウト。もがいても、あがいても勝てなかった2カ月間が脳裏に浮かぶ。あきらめかけたその時、白球がバックスクリーンへ飛び込んだ。「泣きそうでした。いつもかっこいい栗山さんが3割増しに見えました」。頼れる主将の1発に、我を忘れて喜んだ。

 打線の援護に恵まれない不運が続いた。4月24日に3勝目を挙げてから、7試合に先発。すべて5イニング以上を投げ、0勝1敗、防御率3・32。負けがこんでいないように、試合はつくるが、勝ちきれなかった。この日も無得点が続き、心が折れかけたが「調子はよくなかったけど、なんとか我慢して、自分の力で勝ちを取りにいった」。点を取られなければ負けないと、自分に言い聞かせた。

 悪い流れを変えるため、「おはらいに行こうかと本気で思った」という。気分転換といわれるものは、かなりやってきた。すし好きだが「思いきり焼き肉を食べてみた」。おしゃれには人一倍気を使うが、珍しく両サイドを刈り上げる髪形にして「韓国風にしてみた」。勝ったごほうびにしていた買い物を「勝ってないのに行ってみた」。普段はやらないことを試し、風向きがようやく変わった。

 投球にも新たな変化があった。ヤマ場だった6回1死二塁のピンチでは、3番銀次、4番ジョーンズを打ち取った。前日5安打の銀次にはフォークで二ゴロを打たせ「今年はチェンジアップに頼って、フォークを投げていなかった。“新球”を磨いてきた」。球種を増やして幅を広げ、好調の楽天打線をわずか2安打。136球の熱投だった。

 前回登板後、間隔が空くために出場登録を抹消された。1軍に同行して調整するはずだったが、渡辺監督はあえて2軍行きを命じた。危機感を持たせたことで「今日は気持ちが出ていたね。新たな野上のスタートになる」。力強く握手を交わし、たくましさを増した右腕をねぎらった。【柴田猛夫】