CS圏確保へ、竜の最終兵器が投入される。右肩痛で2軍調整中の中日浅尾拓也投手(28)が1軍復帰することが決まった。高木守道監督(71)が10日「上で投げさせた方がいい。上げるなら巨人戦から」と明日12日巨人戦(ナゴヤドーム)からの昇格を明言した。沖縄で2位阪神に連敗を喫した守道竜。2月キャンプから苦しみ抜いた背番号41がG倒の使者、浮上の使者となって帰ってくる。

 待ちに待った男の復帰だ。沖縄セルラー那覇で阪神9回戦が始まる前。高木監督が、浅尾の1軍昇格を明言した。

 「痛みとかがないなら上で投げさせた方がいい。上げるなら巨人戦から。お客さんも呼ばないかん」

 逆襲への起爆剤。ついに浅尾昇格というラスト・カードを切る。

 環境も整える。起用法を問われた指揮官は「最初は点差関係なく投げさせなアカンやろな」と思案顔で話した。まずは久しぶりの1軍の場に慣れさせる。だが、いけるとなれば迷いはない。「外国人(マドリガル)、浅尾、岩瀬の並び」。11年MVP右腕を勝負の分岐点で投入する。「勝利の方程式」に組み込む考えだ。

 我慢してようやくこの時を迎えた。右肩痛で開幕前から2軍生活を続けてきた浅尾が実戦復帰したのは6月23日。今中投手コーチは「ここまで我慢したら、もう我慢比べ」と焦らせることはなかった。浅尾自身も「いつ上がりたいとかじゃなく、目の前の試合を一生懸命に投げることだけを考えたい」と、期限を設定することはなかった。

 この日の由宇だ。浅尾はウエスタン・リーグ広島戦に7回から登板。2三振を奪い、1イニング無失点に抑えた。実戦復帰してからの2軍戦は、5試合に登板して6回5安打5失点(自責4)、防御率6・00。数字は決して良くないが、右肩は問題ない。首脳陣は、緊迫した1軍のマウンドに戻れば、本来の力を発揮すると判断した。

 昨季中継ぎでフル回転した田島は先発に転向してもピリッとせず。2軍落ちが決まった。計算できるリリーバーの不在が、守道竜の不振を象徴している。沖縄では屈辱の連敗に、ルナ離脱のショックも重なった。借金は今季ワーストの13までふくれ上がった。竜党にとってさみしすぎる夜。浅尾昇格が唯一の光だった。【桝井聡】

 ◆浅尾の経過

 2月の沖縄・北谷キャンプで実戦登板しないまま、15日からのWBC候補合宿に参加した。合宿の間も実戦で投げる機会のないまま代表を落選。その後の精密検査で「右肩関節腱板(けんばん)損傷」と診断された。3月にはキャンプ以来の打撃投手を務めたが、肩の違和感を訴えて途中降板。開幕に間に合わないことが確定した。5月7日ウエスタン・リーグ阪神戦での実戦登板プランも結局見送りに。慎重に回復を図り、6月23日ウエスタン・リーグ広島戦で248日ぶりの実戦マウンドに上がった。