<オリックス0-1楽天>◇15日◇京セラドーム大阪

 先発の舞台に帰ってきた。左膝の手術から復帰した楽天長谷部康平投手(28)がオリックス戦で今季初先発。6回を3安打無失点に抑えた。打線の援護がなく勝ち星はつかなかったが、先発として十分な仕事を果たした。0-0の9回には、枡田慎太郎内野手(26)が決勝ソロを放った。球団初の前半戦首位が決まった。

 走者を背負っても、長谷部は慌てなかった。2回、2死からオリックス・バルディリスに三塁打を打たれたが、続く山本を空振り三振。フルカウントから、「良かった」というチェンジアップを低めに決め、空を切らせた。援護がなくても、集中力は途切れない。6回まで0を続けた。

 久しぶりの先発マウンドだった。昨年5月に左膝を再手術。今月5日に中継ぎとして1軍復帰を果たしたが、公式戦の先発は11年10月9日のロッテ戦以来だった。これまでも先発起用が多かった。「緊張したけど、試合に入ればやるだけでした」と、本来の持ち場で力を発揮した。

 あの日とは見違えるようだった。昨年2月21日、巨人とのオープン戦に先発したが、2回3安打4失点と大崩れ。直球のスピードは130キロに届かず、変化球はストライクが取れなかった。実は、左膝が既に悲鳴を上げていた。キャンプ中に痛めていた。「踏ん張りが利かなかった」。再手術を決意した。

 3カ月続いたリハビリ期間中は、千葉で病院とホテルを行き来する毎日。そんな生活の中で、完璧を追い求めすぎていた自分に気が付いた。「もう100%には戻らない。70~80%まで戻ればいい。それぐらいに割り切りました。早く復帰したいと急ぐのもやめました」。結果、たどり着いたのは「無」だという。「何も考えない。無になったことで、自分を1歩引いて見られるようになりました」と明かした。割り切ってリハビリに集中したから、この日の快投につながった。

 星野監督は「今日は投手だよ。長谷部が良かった。球が切れていた」と自ら名前を挙げ、ベタ褒めした。勝ち星こそつかなかったが、6回3安打無失点は先発として合格点。「(後半戦も)ローテに入るだろう」と目を細めた。長谷部は「ゼロに抑えられたので、結果としては良かった」。次は、勝ち星という結果も手に入れる。【古川真弥】