<オールスターゲーム:全セ3-1全パ>◇第2戦◇20日◇神宮

 これじゃ神宮グランド花月!?

 阪神のルーキー藤浪晋太郎投手(19)がとんでもないパフォーマンスを演じた。全セの4番手で6回に登板。大阪桐蔭の先輩、全パの4番日本ハム中田に頭上を越える山なりスローボールを2球続けて投じると、マウンドに詰め寄ってきた中田と即興コント。本職では2回2安打無失点。笑わせて、うならせ、まさに千両役者だ。

 阪神藤浪がファンの度肝を抜いた。4番手でマウンドに上がった6回2死走者なしで、大阪桐蔭の先輩でもある日本ハム中田を迎えた。

 注目の初球。あろうことか、キャッチボールのようなフォームのまま投じた。球速表示もされないボールはフワフワと中田の頭上を越え、谷繁が伸ばしたミットのはるか上を越えた。2球目も同じくスローボール。今度は中田の背中を抜いた。バットを捨て、マウンドに歩み寄る中田と一触即発か-。すべては大阪桐蔭コンビの名演技。場内のボルテージは最高潮になった。

 3球目からは、転じて真剣勝負だ。直球ばかりを続け、最後は145キロで空振り三振に斬った。「3-1からボール球を振ってくださったので。なんとか、四球にならなくて良かったですね」。最高の結末に、胸をなで下ろした。

 前日、第1戦の最中に発端があった。7回に中田が一塁守備に就き、藤浪は一塁コーチを務めた。「明日当てたら、いくからな」(中田)と先制パンチを食らった。さらに2人の先輩、阪神西岡が爆笑劇のシナリオを書いたことを暴露。藤浪は「(西岡)剛さんの指示です。スローボールを投げろと言われました。2球目は谷繁さんのサインでした。剛さんが喜んでくれたので良かった」と、舞台裏を明かした。

 全セ最年少の19歳。先輩からかわいがられた。全セ原監督もその1人だ。試合前、クラブハウスからグラウンドに続く通路で「大きくなったなあ」と声をかけた。意味が分からず、一瞬戸惑った。原監督から「昨日より大きく見えるぞ」と言われると、スマイルで応えた。リラックスさせるためのジョークか、はたまた1日球宴を味わったことでオーラをまとったのか…。指揮官の心づかいでリラックスし、大勝負を成功させた。【山本大地】