今季限りでの現役引退を決意した中日山崎武司内野手(44)が今日29日に名古屋市内で会見を行い、自らの言葉でファンに「引退」を報告する。28日はナゴヤ球場を訪れ「明日(29日)みんなの前でいろいろ話をしたいと思う。自分から報告をしたい」と口にした。残る仕事はクライマックスシリーズ(CS)進出争いを続けるチームの力になること。プロ27年目の大ベテランは、最後のひと振りまでチームの勝利のためにすべてを注ぐ。

 ナゴヤで愛され、ナゴヤを愛した山崎らしい言葉だった。今季限りで引退という決意を固め、一夜明けたこの日。ナゴヤ球場を訪れ隣接する合宿所「昇竜館」で西脇紀人編成担当と約1時間の会談を持った。その後、カメラマンと報道陣が待ち受ける玄関に姿をみせた。

 「引退」の2文字は胸の内にとどめ「明日(29日)自分から報告をしたい。明日の公の場まで内容は控えさせてもらいたい」と言った。楽天時代にお世話になった東北にも山崎ファンはたくさんいる。ケジメは自らの言葉で-。男・山崎らしい引き際の美学だった。

 通算403本塁打の大砲は27日に今季2度目の2軍降格が決まると、腹を決めた。「この時期に1軍登録を抹消されるということがどういう意味を含んでいるか、長く野球をやっているから分かっている」。背水の陣で古巣に復帰し2年目。今回の決断、それは引き際を自ら決めることのできる数少ない選手だけに許された特権でもあった。

 戦いはもう少し続く。プロ27年目のシーズン。最後の最後まであがき続け、はい上がる覚悟を持っている。会見が試合のない29日に設定されたのも「こうやってチームがCS争いしている中で、一個人のことで引っ張っても…」という思いから。「もう1度実力で(1軍に)上がれるように、ファームで頑張る」。

 会見を区切りとし、2軍で再出発する。「コーチじゃないから指導はしないけど、背中を見てもらえれば」と後輩と汗にまみれ、生きざまを示す。この日の西脇編成担当との話し合いでは若手の平田、堂上直らの成長を願い、チームに最新データ解析システムの導入も訴えている。井手峻球団代表も「今は選手。戦力として考えている」と期待を寄せる。44歳タケシの“ラスト・ダンス”。残りは少ないが派手に、そして格好良く決めてくれるはずだ。【八反誠】

 ◆山崎武司(やまさき・たけし)1968年(昭43)11月7日、愛知県知多市生まれ。八幡中から愛工大名電を経て、86年ドラフト2位で中日入団。96年本塁打王。03年にオリックスに移籍し、05年から楽天でプレー。07年に本塁打、打点の2冠を獲得。11年オフに戦力外となり、昨季から中日に復帰。通算2237試合出場で1833安打、403本塁打。181センチ、105キロ。右投げ右打ち。