<阪神0-1中日>◇7月31日◇甲子園

 虎がデッドラインまで追い込まれた。1点も奪えず、今季15度目の0封負け。巨人とのゲーム差は今季ワーストの6・5に広がってしまった。3日にも阪神の自力優勝が消滅し、巨人に優勝マジックが点灯する可能性まで浮上。ただ、まだ終わったわけじゃない。最大の正念場で、虎よ、息を吹き返せ!

 ホームが遠かった。1点を追う9回、相手の守護神岩瀬から2死一、二塁のチャンスをつくった。打席には4番マートン。満員の甲子園はこの日、最高の盛り上がりを見せた。だが、打球は二塁正面へ。試合開始から2時間36分、イライラばかりが募った今季15度目の0封負けだった。

 「きょうは(捕手が)谷繁じゃない分、配球が変わっていたかな。いつも決め球に使っていたフォークも落ちていたし。低めに手を出しすぎたね」

 和田豊監督(50)は冷静な言葉を並べたが、その表情は険しかった。相手先発は弱冠20歳、プロ2年目で未勝利の右腕・西川だった。前回対戦(沖縄セルラー那覇)では5点を奪った相手だった。だが、その試合で本塁打を放った西岡はいない。さらに正捕手谷繁ではなく、松井雅に導かれた西川に虎打線が打ち取られていく。低めにボールを集められ、7回2死まで1人の走者も出せなかった。鳥谷の四球、マートンの中前打で不名誉な記録だけは免れたが、7回1安打無得点と完璧に封じられた。

 フラストレーションのたまる展開の中で、和田監督が怒りを爆発させた場面もあった。7回、カウント2ストライクから坂への3球目は低めに外れたように見えた。だが、佐藤球審の手が上がった。三振。坂が思わず声を上げた。この瞬間、指揮官がベンチを飛び出した。ダッシュで詰め寄ると、顔を真っ赤にして抗議した。5分近く抗議した末にベンチへと戻ったが、鬼気迫る表情だった。

 「済んだことというか、審判がストライクと言えばストライク。こっちはどうすることもできないから」

 試合後は、努めて淡々と振り返ったが、巨人追い上げへ必死に戦っている中で見過ごすことのできない判定だったようだ。

 東京ドームでは巨人が勝った。ゲーム差はついに今季最大の6・5まで開いた。この差から虎の逆転優勝は過去1度だけ。さらに、次カードは巨人との直接対決。3日にも巨人に優勝マジックが点灯する可能性が出てくるまで追い詰められた。

 前日7月30日の試合前にはリードオフマンであり、精神的支柱でもあった西岡が離脱した。長期離脱の可能性もある中で今後の戦いへ不安は拭い切れない。優勝へのデッドラインだ。戦力が十分に整わない、もどかしさもある。加速度的に遠ざかっていく巨人の背中。悲願のリーグ制覇を狙う猛虎が崖っぷちに立たされている。【鈴木忠平】

 ▼巨人○、阪神●でゲーム差が今季最大の6・5になった。阪神がリーグ優勝した5シーズンのうち、最大ゲーム差を逆転したのは64年で、今季と同じ6・5差。85試合を消化した7月26日時点で首位大洋とのゲーム差6・5を、残り55試合を33勝19敗3分けの貯金14で乗り切り、逆転Vを達成した。