<ヤクルト7-11中日>◇28日◇神宮

 中日山本昌投手が日本人で初めて48歳の先発勝利を挙げてチームは連勝、3位広島に2・5差に迫った。5回5失点ながら、大量援護にも恵まれてベテランの持ち味を発揮。前日49&50号を放ったバレンティンを単打1本に抑えるなど、キング斬りのお手本も示した。打っても48歳0カ月のタイムリーで、今年7月16日山崎(中日)の44歳8カ月を抜くセ・リーグ最年長安打を記録。球団は49歳を迎える来季の契約更新を決めており、投打で日本記録を持つ浜崎真二超えの夢が膨らんできた。

 大記録にも、山本昌は恐縮しきりだった。「こんな展開でバタバタしちゃって恥ずかしい。後ろの投手も使って申し訳ないです」。5回で105球を投げ7安打5失点。大量援護に守られたが、KO気味の5勝目にはうれしさと恥ずかしさが同居したようだ。だが48歳での先発白星は史上初の快挙。40歳代の白星も39勝で史上最多。内容は泥臭くても、胸を張れる金字塔を打ち立てた。

 変化球が高めに浮き、勝利投手目前の5回には4点を失うなど、苦しい内容。だが要所は締めた。中でもバレンティン封じは圧巻。丁寧に四角を使い、2回の第1打席は内角真っすぐで詰まらせ中飛。4回の第2打席は宝刀スクリューで三ゴロに仕留めた。走者を背負って迎えた5回は単打にとどめ「よかったのはあれだけかな」と、キング斬りに納得の表情だった。

 球団は26日、来季49歳になる山本昌と契約を更新する方針を示した。西脇編成担当は「気力、体力とも充実してるしゲームをつくっている。やめろという理由が見つからない」と説明。山本昌も「まだ需要があるなら、もうちょっと頑張りたい」と現役続行指令に即答。高木監督もこの日の試合前「4勝もしてるんだから当然でしょう。うちで他に誰がおるんや?」と、先発では8勝大野と5勝山井に次ぐ白星を挙げていた左腕の現役続行を支持。そんな期待に、結果で答えようと山本昌も燃えていた。

 勝利への執念はバットにも乗せた。2回無死満塁の好機では25学年下、22歳八木の140キロ直球を中前へ運ぶ5年ぶりのタイムリー。「(間隔が)開いちゃったね。でもこういうのも記録になるのかな」。48歳0カ月での記録的一打で、自分自身を援護した。

 高木監督も山本昌をたたえた。「5回の4点はよくないけど、それまで抑えたから、こういう試合になった。マサは十分ですよ」。大長老の投打にわたる奮闘が連勝を導き、3位広島にも2・5差に迫る原動力になったとの評価だ。ただ本人は満足していなかった。「内容が悪くて腹が立つ。情けない」。帰り際、自分への怒りをあらわにした。来季は勝ち星、打点で日本記録を持つ浜崎真二超えもかかる。50歳手前でもこのハングリーさがある限り、おじさん族の星がまだまだ輝き続ける。【松井清員】

 ▼48歳0カ月の山本昌が今季5勝目。50年5月7日浜崎(阪急)の48歳4カ月(救援勝利)に次ぐ2位の年長勝利で、自身の持つセ・リーグ最年長記録を更新。40歳になってからは通算39勝目で、工藤(西武)の38勝を抜いて40代の白星が最多となった。打っては2回に適時安打。今年の7月16日山崎(中日)の44歳8カ月を抜くセ・リーグ最年長安打となり、打点も自身が昨年4月22日に内野ゴロでマークした46歳8カ月のセ・リーグ最年長記録を更新した。プロ野球記録は安打が50年9月28日浜崎の48歳9カ月で、打点は50年4月30日浜崎の48歳4カ月。48歳以上の勝利、安打、打点はすべて浜崎に次いで2人目も、浜崎は勝利投手の5月7日は無安打。48歳以上で自ら適時安打を放って勝利投手は初めて。