<日本ハム3-2ソフトバンク>◇3日◇東京ドーム

 日本ハムの陽気な背番号1が、3連敗中で沈みがちだったチームの雰囲気を一掃した。久々に球場に響いた、陽岱鋼外野手(26)のお立ち台での決めぜりふ「サンキューで~す」。おいしい場面は、逃さない。序盤からヒーローのチャンスは立て続けにやってきた。

 1点を追う3回、走者を三塁に置いて、ソフトバンク・バリオスのシュートに詰まりながらも、しぶとく二遊間を抜いて同点適時打。4回には、代わったばかりのソフトバンク金無英の初球を、会心の一振りで右前へ運んで勝ち越しに成功。「内角は捨てて、真ん中から外を待っていた」と、狙いどおりのコースに入ってきた変化球を逃さず「普通なら引っかけてしまうボール。あれは、素晴らしいバッティングでした」と自画自賛の一打だった。

 今季は開幕前から、商売道具の“足”に災難が降りかかる。2月にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)台湾代表候補の合宿中に右膝に死球を受け、歩行が困難になるほどの激痛が走った。シーズンを迎えてからは、6月12日阪神戦(札幌ドーム)で、体調不良から右ふくらはぎをつって途中交代。本格的な夏を前にした7月中旬からは、右膝痛を抱えての出場が続いてるが「感覚がおかしくなるから」と、痛み止めの注射などは一切打たない。栗山監督が「ダイカンみたいな明るい選手がいると本当に助かる」と言う通り、苦しいチーム状況だからこそ、弱さを隠して笑顔を振りまく陽岱鋼の存在は心強い。プロ魂で突き進んできた116試合。残り28試合も、輝く笑顔で突っ走る。【中島宙恵】