<楽天3-2日本ハム>◇6日◇Kスタ宮城

 暗く、狭いダッグアウト裏の通路で、日本ハム大谷翔平投手(19)は悔しさをあらわにした。「何とか勝ちたかったです。(田中との差は)自分の中で感じるものはありました。それをこれからやっていけばいい。すぐできるわけじゃないし、ひとつひとつやっていけばいいと思います」と絞り出した。

 勝利投手の権利まで、あとアウト2つ。尊敬する球界の先輩を苦しめたが、あと1歩が遠かった。

 序盤は走っていた直球が、シュート回転するようになった。2点リードの5回1死二、三塁。楽天藤田への2球目、145キロのまっすぐも、スライドしながら中へと入った。「(投球が)甘かったですね。先制点を取っていい流れだったし、そのまま行きたかった…」。中前へとはじき返され、試合は振り出しに戻った。5回5安打2失点で降板した。

 4回に見舞われた不運。大谷は報道陣に対し、2度同じ言葉を並べた。「大丈夫でした」。絶対に言い訳はしないが、影響はあった。マギーの打球が、右手小指付近をかすめ、そのまま左膝の内側に当たった。いったんベンチ裏に下がり、患部の状態を確認した。約3分後、再び戦いの場所へ。島内、松井は打ち取ったが、制球は乱れ、ともにフルカウントまで持ち込まれた。マスクをかぶった近藤は「(打球が当たった後)ふける(浮く)ボールが増えた」と証言した。

 自身に黒星はつかなかったが、8度目の先発登板で初めて、チームが敗れた。「二刀流」ルーキーが積み上げてきた不敗神話は、球界のエースが持つ、もっと強大な不敗神話の前に、崩壊した。「申し訳なく思います」。きつく、唇をかんだ。【本間翼】