<阪神6-9巨人>◇8日◇甲子園

 ため息すら消えた。悪夢は6回だった。阪神松田遼馬投手(19)が3本目の本塁打を浴びた。巨人戦では15年ぶりとなる1イニング最多の9失点。それまでの投手戦がウソのように、12人の猛攻を食らった。静まりかえるベンチ。動けないナイン。直球を打ち返された松田は「抑えたかった…」とうつむいた。プロ初登板から2カ月、走り続けてきた右腕は2軍での再調整が決まった。

 小さなほころびから傷が広がった。きっかけは榎田が与えた菅野への四球。長野、松本哲の連続二塁打で逆転された。1-2の無死一、二塁で松田を投入。ここで、4番村田は意表を突くバントだった。投手と三塁の間のゴロに、三塁ベースへ戻っていた西岡は対応できない。「僕の経験不足もあるし(松田)遼馬は悪くない。1つでもアウトを取っていれば9点いかなかった」。急造三塁は責任を背負った。

 和田監督

 記録に出ないミスというか、やるべきことができなくて大量失点になった。

 タテジマ一筋の虎将だ。「一番負けたくない相手」に猛虎の血はたぎった。9回は力士のように体を張って審判との防波堤になり、マートンへの退場を防いだ。執念は実らない。4月には甲子園で3戦連続無失点、一時は4連勝もした巨人戦で、07年以来の勝ち越しはならなかった。

 敵地で3連敗した巨人戦から、広島、DeNA、巨人と4カード連続で負け越した。宿敵とのゲーム差は今季最大の10へ…。ギブアップ寸前の和田阪神。指揮官は「その日の全力を尽くす。それが使命」と自らに言い聞かせるようだった。【近間康隆】