広島前田智徳外野手(42)が1日、引退試合(3日・中日戦=マツダスタジアム)での“衝撃ラスト”を予告した。同球場で行われた全体練習に参加。「できたら内野フライか、ファウルフライがいい」と、引退を惜しむファンとは真逆の青写真を描いた。緒方打撃コーチからは、きょう2日阪神戦(同)の出場を再要請されたが固辞。残されたのは1打席。天才打者の現役ラストは、いかに…。

 難解だ。天才の思考は、想像をはるかに超えている。こんな終わり方を求めるのは、本人だけではないだろうか。前田智が語る理想の最終打席は、誰も予期せぬものだった。

 「ゴロを打って走るのは避けたい。できたら、内野フライか、できたらファウルフライがいい。明後日は、(バットの)ヘッドが下がりますから。力負けして、レフト方向へ(打球が)上がるかもね」

 引退試合の3日中日戦は、前田智の引退発表直後に、チケットは完売。少なくとも超満員のファンが望む結果ではないだろう。

 独特の感性を持つ男は、異様な空気の中で登板することになる相手投手に、情けをかけた。

 「運が悪かったと思ってあきらめてくれ。無難にやってくれれば、おれもそれなりにやるから」

 そう簡単に打てるものではないことも、確かだ。引退を決意させた左尺骨骨折は、かつて両アキレスの負傷から復帰した男も、乗り越えられなかった。夏場に行ったスローボールマシンでの打撃でも、患部が腫れリハビリ行程は後退。27日の引退発表後、平然と打撃練習しているのが不思議なほど。もっとも「5分も打ったらプルプルするね」と話すように、体の反応は正直だ。

 だからこそ、この日も意思は曲げなかった。緒方打撃コーチから、再度打診された2日阪神戦での出場も固辞した。

 「丁重にお断りしました。最後まで恥をかくと思うので。最後の1日だけで終わりたい」

 残された打席は、わずか1つ。前田智の予告が外れることを、ファンは祈っているはずだ。【鎌田真一郎】