中日は4日、大幅減俸を提示し退団の可能性が出ていた井端弘和内野手(38)と来季の契約を結ばないことになったと発表した。在籍16年、生え抜きの象徴的存在の退団が正式に決まった。獲得に乗り出す球団がない場合、3月にワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表にも選出された名手が、最悪このまま引退となる可能性も出てきた。

 長年にわたって中日の象徴的存在として君臨してきた井端の退団が正式決定した。秋季キャンプ4日目を迎えたこの日午後、ナゴヤ球場内で西山和夫球団代表が緊急会見。苦渋の面持ちで「ご本人の意思が固く、やむなく契約更新を断念することになりました」と発表した。

 二塁・荒木とのコンビ「アライバ」で鉄壁の二遊間を形成。ベストナイン5度、ゴールデングラブ賞7度受賞の名手は姿を見せないまま中日での歴史にピリオドを打った。球団は自由契約の手続きを取ったが、今後獲得に乗り出す球団がない場合、最悪このまま引退となる可能性も出てきた。

 井端は今季の推定年俸1億9000万円から減額制限を大幅に超える88%減の2300万円前後の提示を受け、1日のキャンプ初日から欠席が続いていた。この日午前まで西山球団代表と電話で交渉を続けてきたが、到底受け入れることができない提示だったようだ。すでに同球場のロッカーも整理済みだった。ただ、同代表は「金額のことで決断を下したとは思っていない」と語った。その上で「大功労者。残念のひと言。その言葉に尽きます」とこれまでの働きに感謝。提示額や交渉の経緯については一切明かさなかった。

 井端は球団を通じてコメントを発表した。「今後のことは何も考えていません。この先、何をするにしても手術した手と足の治療が必要。今は何も考えずにリハビリに専念します」。現役続行には触れておらず、含みを持たせるような言い回しだった。

 中日で17年目のシーズンとなるはずだった来季に備え、10月に右足首と右肘の手術を受けたばかり。3月のWBCで発揮した勝負強さは魅力だが、今季は故障もあり打率2割3分6厘、1本塁打、18打点と成績は振るわなかった。“中日の顔”は、ひっそりと一時代を築いた名古屋を去ることになった。

 ◆井端弘和(いばた・ひろかず)1975年(昭50)5月12日、神奈川県生まれ。堀越-亜大を経て、97年ドラフト5位で中日入団。3年目の00年途中から内野のレギュラーに定着し、04~09、12年とゴールデングラブ賞7度。荒木雅博との二遊間は「アライバ」コンビと呼ばれた。13年WBC出場。173センチ、75キロ。右投げ右打ち。