ソフトバンクが、国内権行使を表明した広島・大竹寛投手(30)に速攻「ラブコール」だ。12日、編成トップの王貞治球団会長(73)が大竹に言及。「いい人が手を挙げてくれた」と、獲得調査に本腰を入れる構えを示した。既にFA権行使を表明している中日中田賢、日本ハム鶴岡の獲得に乗り出す方針を固めており、球界初となるFA選手3人同時獲得の可能性も出てきた。

 事実上のラブコールだった。ソフトバンク王会長は夕刻、キャンプ地の宮崎空港に到着。待ち受けた報道陣から大竹がFA権行使を決断したと聞き「そうなの?」と声のトーンを上げた。「まずは広島とのアレ(残留交渉)があるだろうから」と前置きしながら、言葉は自然と弾んだ。

 「今年、ウチはピッチャーで苦労したから。そういうことであれば、いい人が手を挙げてくれた」

 まさに補強ポイントに合致する右腕だ。今季のチーム防御率3・56はリーグ4位で、先発投手は4・14。6回以上投げて自責3点以下のクオリティー・スタート(QS)率は39・6%とリーグワーストだった。2年連続で2桁勝利を挙げた大竹は、王会長が「いい人」と言うほど喉から手が出る存在と言える。

 楽天、巨人と日本シリーズを戦った両軍など複数球団の争奪戦になりそうだ。ソフトバンクは15日の交渉解禁を待って、正式アタックする見込み。過去に内川、帆足らとのFA交渉では4年契約をベースにしており、今回も同様の大型契約を用意するとみられる。

 大型補強へなりふり構わない。小林至海外兼中長期戦略部長が「今年は積極的に動く年と思う」と話すように、まさかのBクラス低迷から巻き返しを図る。今オフは大竹と同じ先発要員として中日中田賢、さらに日本ハム鶴岡のFA2選手獲得に乗り出す方針を固めている。3人同時獲得なら球界初。ソフトバンクの複数同時獲得は2度ある。過去、94年オフに西武から石毛と工藤を、10年オフに細川と内川を獲得した。

 1シーズンでFA宣言選手が20人以下の場合、1チームが獲得できるのは2人まで。ただし今季年俸で格付けされたCランクの選手は適用外で、推定年俸7000万円の中田賢はこれに該当するとみられる。大竹、鶴岡との3人同時獲得も可能だ。新任の後藤球団社長兼オーナー代行は「必要な要望にはすべて応えたい。リスクテイクしなければいいパフォーマンスは生まれない」と青天井での補強を示唆している。本社の手厚いバックアップを受け、過去に例を見ない大補強を完成させる。