おら保留するど!?

 もっとクレヨンの晋ちゃんだ。高卒1年目から10勝し、新人特別賞を受賞した阪神藤浪晋太郎投手(19)が25日、近づいてきた初めての契約更改に胸を躍らせた。大幅アップが確実な年俸面は不問ながら、意見をはっきり言いつつ疑問があればとことん問いただすつもり。まさかのサイン保留も辞さない強硬姿勢!?

 黄金ルーキーの交渉から目が離せなくなった。

 バラ色に溺れない。虎の頼もし19歳は、怖いぐらいに落ち着いていた。ルーキー藤浪は生まれて初めての一大イベント、初の契約更改交渉を前にしても新人離れしていた。

 「楽しみと言えば楽しみですね」とワクワクする気持ちをかみしめながら「初めてのことですし、絶対一発でサインする、とは言わないですよ」と仰天の予告?

 近年の契約更改交渉では珍しくなった「保留」シーンをほのめかして、ニヤリとした。

 開幕から先発ローテーションを守り、24試合で10勝6敗、規定投球回には6回1/3足りなかったが防御率2・75。高卒新人初となるクライマックスシリーズ初戦先発も果たした。球団首脳も「活躍した選手は上げてあげるのが筋。重圧の中で結果を残した。成績以上のものもある」と明かした。

 新人王のヤクルト小川は推定1200万円から4倍の4800万円にアップすると予想されている。藤浪はどこまで。世間の注目はその1点だが…。

 「金額はどうこう言うつもりはないです。その他のことで球団にいろいろ聞きたいし、話したいと思っています」

 あくまで晋ちゃんスタイルだ。「金じゃない!」と年俸面は焦点にせず、交渉で自分の意見を主張したいという。その確かなスタンスを伝え聞いた球団首脳は「何でも聞いてもらって構いません。頼もしいね」と拝聴する構えだ。

 決して不遜なことではない。阪神の新人でも、最初の契約交渉から保留した例はある。新人王に輝いた92年久慈が「とりあえず話を聞くだけ」と言い、特別表彰を受けた98年坪井も「最初から話を聞かせていただくだけと決めていました」とサインをしなかった。藤浪も特別表彰されただけに保留する“権利”は十分ある。

 社会人出身の先人とは違う19歳だが、藤浪は1月、初のプロキャンプに参加する前にも堂々とした言葉を残していた。先輩選手に対して「聞いても自分に合うかどうか分からない。自分を見失わないことが一番」とキッパリ。右も左も分からないプロの世界の入り口から、自分の考えをはっきりと持っていた。

 おませな、いやいや、しっかり者の晋ちゃんだからこそ達成できた高卒1年目の2桁勝利。マウンドからテーブルに舞台を移す契約更改でも「おらはおらだ!」と突き通す。【宮崎えり子】