西武が来季中に国内移籍が可能なフリーエージェント(FA)権を取得する岸孝之投手(28)に、3年の大型契約を提示することが29日、分かった。この日までに、複数年契約の可能性について、球団幹部は「当然、検討する必要があるでしょう。毎年のように2ケタ勝ち、1年間フルに投げる投手。その評価はしっかりやります」と明言。11年オフの主砲中村に並ぶ3年契約で、エースへ最大限の誠意を示す。

 西武の投手史上、最長とみられる契約年数が、獅子のエースに対する評価の高さを物語った。投手では、昨オフに涌井に2年契約を提示した例はあるが、複数年契約には慎重な姿勢を取るのが球団方針。それでも、球団側は今季もチームトップタイの11勝を挙げ、入団7年間で6度の2ケタ勝利の実績、ファンから愛される人気の高さを評価。名実ともにチームの顔に成長した岸に、西武では上位に入る長期契約のオファーを決めたようだ。

 今季、FA権を取得した片岡は巨人への移籍が濃厚で、涌井はロッテへの移籍が濃厚。08年日本一の立役者だった2人が移籍の危機だが、これ以上の流出にストップをかける。今季の年俸は1億5000万円。チームへの貢献度を考えれば、2億円規模の提示が相場とみられる。関係者によれば、岸は条件面以上に球団の熱意を大事にする意向を持っているとみられ、球団屈指の好条件で、エースの引き留めを図る。

 ◆球団別FA流出人数

 93年から昨年までFAで他球団(外国含む)へ移籍した選手は89人。西武は石毛、工藤、清原、松井稼、豊田、和田、土肥、細川、帆足、ミンチェ、中島の11人で12球団最多。9人のオリックスが続き、日本ハムとソフトバンクが8人。消滅した近鉄、歴史の浅い楽天(ともに3人ずつ)を除くと、ロッテの5人が最少。西武は片岡、涌井の移籍が決まると、他球団を引き離す13人となる。