阪神藤浪晋太郎投手(19)が“最多勝”を獲得した-。勝ち取ったのは本紙1面奪取数。2013年の日刊スポーツ1面(大阪最終版)を飾った回数で、藤浪が並み居るスター選手を押しのけ、ぶっちぎりの1位となった。リーグで46年ぶりとなる高卒新人10勝という数字もさることながら、話題性でもまさに関西スポーツ界の顔だった。

 神様、仏様、稲尾様。権藤、権藤、雨、権藤…。かつて、連投をものともしなかったエースの姿からこんな言葉が生まれた。今年の紙面においては藤浪が連投、連投の大エースだった。

 今年1年で49度も1面を飾った。占有率はじつに13%を超える。1月1日付の「大谷との夢対談」を皮切りに、藤浪の見出しが躍らない日はほとんどなかった。1面の選択要素はたくさんある。通常は連日同じ主語が続くのは避けられる傾向にある。だが、そこは甲子園春夏連覇したビッグネーム、さらに阪神の黄金ルーキーとあって、話は別だ。1面の2連投なんて当たり前。最長で1月8日から11日までの“4連投”まであった。

 取材陣も藤浪を徹底マークしてきたが、球団側も専属広報をつけることで対応。ほぼ1日に1回のペースで囲み取材を設定した。藤浪自身は取材については「慣れていますし、ありがたいことです」と話しており協力的だ。ただ、報道陣との“駆け引き”ではスーパールーキーならではの才能をちらつかせる。

 「例えば、囲み取材で記者さんに質問されて『ああ、こういうことを言わせたいんだな。こういう記事にしたいんだな』というのは、大体わかるんですよ。高校時代から慣れていますから」

 新人選手にありがちな取材者の意のままに、うなずいてしまうなんてことは決してない。予定調和を期待しての質問には「それは違います-」と切り返されることになる。

 来季はチームのエース級としても期待されるが、紙面でももちろん“大エース”間違いなし。じつはブラックユーモアも持ち合わせた(?)藤浪の魅力を、来年もたっぷりお届けしますので、ご期待ください!【鈴木忠平】