ドタバタ劇で、ハワイへと飛び立った。日本ハム中田翔内野手(24)が21日、トレーニングジム「トータル・ワークアウト」を主宰するケビン山崎氏(57)と行う自主トレーニングのため、大阪桐蔭の先輩にあたる阪神西岡剛内野手(29)、ソフトバンク城所龍磨外野手(28)と関西空港からすんなり出国…のはずが、パスポートを忘れて関係者は大慌て。春季キャンプ直前、恒例となっているケビン氏との総仕上げトレは、波乱の幕開けとなった。

 出発時刻の2時間前、午後8時を少し過ぎた頃だった。毎年、気合満々で空港に現れる中田だが、今年はなぜか表情がさえず、足取りも重い。一緒にハワイへ向かう阪神西岡、ソフトバンク城所が、航空会社のカウンターで搭乗手続きをしている間も、どっかりとイスに座ったまま、1点を見つめていた。「パスポート、忘れちゃった…」。

 見送りのため付き添った母香織さんを車に乗せ、大阪市内のホテルを出たのは1時間以上も前。衝撃の事実に、周囲は凍り付いた。反省しているのか、やや神妙に小さな声で話し始めた。

 中田

 WBCの時じゃなくて良かった。まぁ、大事な大会の時は、何日も前からカバンに入れておくからな。今回、貴重品だからって、ホテルの金庫に入れちゃったのが失敗だったね。

 知人がフェラーリをぶっ飛ばし、ホテルへ取りに戻っている間、なすすべなく座り込んでいる中田を励ますように、西岡が食事に誘った。それでも「ダメなら明日、飛べばいいんやし」と、ふてぶてしいまでに気持ちの切り替えは早かった。

 毎年、スポーツトレーナーのケビン氏と二人三脚で行っている総仕上げトレだが、今年はひと味違う。「いつも1人でハワイへ行っていたから、今年は西岡さんと一緒にできるのがうれしい」。年明けから大阪を拠点に、西岡と自主トレを行ってきたが、そのコンビがハワイでも継続することになった。浮き立つ心とは裏腹に、尊敬する先輩の目の前で、いきなり失態を演じて肝を冷やしたが、午後8時55分、食事中に、マネジメント会社や知人のファインプレーでパスポートを無事に手にすることができた。30日に帰国するまで、現地でトレーニングに励む。「下半身や体幹、体の連動。ウエートや走るメニューの強度を、いつもより上げるつもり」。出発時刻の約1時間前、無事にゲートを通った時の顔には、いつもの自信が戻っていた。【中島宙恵】

 ◆パスポート忘れ

 13年1月、エジプト国際マラソン招待選手の川内優輝は、成田空港出発時にパスポートを自宅に忘れた。航空券代約80万円の臨時出費を強いられたが、大会新記録で優勝した。野球界では09年11月にオビスポ(巨人)がパスポートを忘れてドミニカ共和国への帰国便に搭乗できず、翌日に急きょパリ経由の飛行機で帰国する羽目に。中日の優勝旅行では06年に井上が、07年に荒木が同じ理由でチーム便に乗り遅れた。