本領発揮や!

 阪神の新守護神、呉昇桓(オ・スンファン)投手(31=韓国・サムスン)が25日、韓国LGとの練習試合(宜野座)で快投した。9回に登板。最速155キロの直球を主体に、1回1安打2奪三振で無失点。本塁打を浴びるなど1回2失点した前回登板の紅白戦と別人のような投球。他球団のスコアラーも警戒を強める一方だ。

 オ・スンファン、ファイティン!(頑張れ)の大合唱を受け、呉昇桓はゆっくりとマウンドに上がった。昨季までのライバル韓国・LG戦。ツアーで訪れた韓国人ファンの歓声を意気に感じ、右腕をしならせた。「両サイドから応援してくれた。感謝の気持ちを伝えたい」。先頭打者に初球をはじかれ内野安打を許すと、闘争本能にスイッチが入った。

 続く打者をオール直球で追い込むと、最後は147キロの高めボール球で空振り三振に斬った。打者のタイミングはまったく合っておらず「高めで空振りを取れるのはバランスがよく、いい球がいっているから」。3人目の打者を迎えると、さらにスピードアップ。2球目には球場表示155キロをたたき出した。だが、求めるのは、チームの勝利だけ。新守護神の意識はスピードよりもコントロール。「抑えは1球の失投で試合を終わらせてしまう。今日はまあまあだったけど、もっと気をつけて調整したい」。投じた変化球はカットボール1球のみと力で押した。球威と制球を武器に、対外試合無失点デビューだ。

 前回の紅白戦(20日)からステップアップした投球だった。視察した広島井生スコアラーは「前回より仕上がっている。直球に強い韓国の打者が高めのボール球を空振りしていた。ボールがきている証拠」とノートにペンを走らせた。紅白戦では新井に本塁打を浴びるなど1回2失点。空振りも24球で2球しか奪えなかったが、この日は11球のうち空振り4球。球団の計測では最速149キロだったが、キレの違いは明らかだった。

 次戦登板は5日ソフトバンクとのオープン戦に決定。セ・リーグを避けた「呉昇桓隠し」で他球団を翻弄(ほんろう)する。この男ならやってくれる。歩み始めたのは、きっとサクセスロードだ。【池本泰尚】