<オープン戦:中日3-5DeNA>◇2日◇ナゴヤドーム

 ガッツーン!

 巨人からFA移籍した中日小笠原道大内野手(40)がオープン戦1号を放った。本拠地ナゴヤドームで出場2戦目の初アーチ。名刺代わりのガッツ弾で地元のファンを喜ばせた。オープン戦の本塁打は実に4年ぶり。一塁、三塁の定位置争いが激しさを増す中、フルスイング男が復活の予感を漂わせている。

 力強く、期待感がつまったアーチだった。これまで敵として苦々しく見送ってきた放物線が、この日からは竜党の目尻を下げる1発になった。小笠原が先頭で打席に立った2回。カウント2-2から真ん中に入った5球目だ。「久しく打ってなかったので感じは悪くなかった」。DeNAの新助っ人右腕モスコーソのスライダーを代名詞のフルスイングで右翼席のファンに届けた。

 鳴り物がないナゴヤドームの右翼席。小笠原への声援が際立つ。試合前の「7番・指名打者、小笠原」のコールには、谷繁兼任監督に負けない歓声が起こった。40歳の新顔は「それは大げさでしょ」と苦笑いだが、本拠地2戦目で飛び出た“あいさつ弾”には「オープン戦とはいえ、ファンの方に見せられたことは良かった」と珍しく喜んだ。巨人時代も得意としていた球場だけに「やりやすい感じはあります」と印象がいいようだ。

 独自の調整を貫いた。「気のせいです」-。詳細は決して明かさないが、キャンプでは規格外の長尺バットを振り込んだ。2月21日のシート打撃では守護神岩瀬から右越え弾。オーバー40のベテランが出場を控える中、志願して22日の開幕オリックス戦から出た。通算2080安打の野球職人は、開幕までの歩み方を熟知している。

 “新人”をサポートするのは、6年前に西武からFA移籍した41歳和田だ。この日までにナゴヤドームの新ロッカー配置が決まり、和田と小笠原が隣になった。1歳年上の和田は「やっぱり年が近い選手が集まるよ」と説明。04年アテネ五輪や06年のWBCでともに戦った“同志”とあって、絆は強い。

 開幕一、三塁争いはどこよりも激戦だ。森野、ルナに加え、外野兼任でこの日3安打を放ったゴメスだっている。谷繁兼任監督も「みんなにチャンスがある」とにやりと笑った。小笠原は開幕に向けて「大きなけがをせず、限られた時間の中でしっかりやっていきたい」と言葉をかみしめるように言った。充実した顔が、何よりも順風な調整を物語る。ガッツ復活劇、名古屋で開演の予感だ。【桝井聡】