やっぱり飛ぶボールだった。日本野球機構(NPB)は10日、プロ野球の公式戦で使用している統一球の飛びやすさを示す「反発係数」の測定検査で、規定より高い数値が出たと発表した。今季1回目の抜き打ち検査の結果、6球場のうち5球場で基準値の上限(0・4234)を超え、全体の平均値は0・426だった。NPBは再検査の実施を決め、製造元のミズノ社に速やかな原因究明を指示した。

 予想外の結果だった。NPBは今季開幕2試合目の3月29日に抜き打ちで6球場からボールを抽出して検査。この日、測定を委託している日本車両検査協会からデータが届いた。ボールの飛びやすさを示す「反発係数」の平均は0・426。規定の範囲内に収まったのは西武ドームだけで、5球場でアグリーメントで定められた基準値の上限をオーバーする数値が計測された。昨季の同時期に行われた検査結果と比較しても0・01上回っている。

 昨年6月に秘密裏にボールの仕様を飛びやすく変更していたことが発覚。前コミッショナーが辞任する騒動に発展した反省を踏まえ、NPBはすぐに公表に踏み切った。12球団と選手会事務局にも検査結果を伝え、製造するミズノ社には速やかに原因を究明するよう指示した。再検査の実施も決め、この日試合が開催された6球場から無作為にボールを抽出した。再検査の結果は今月中に出る見込みだ。

 NPB井原事務局長は「検査結果に驚いている。現時点で原因は特定できていない。ミズノ社の調査と、再検査の結果を待ちたい」と話した。ミズノの広報宣伝部は「現在、事実関係を確認しているところです」とコメントした。

 今季は開幕直後から各地で乱打戦が目立ち、9日には巨人村田が東京ドームで左翼最深部の天井まで届く飛距離150メートルとも、160メートルとも推定される超特大弾を放ち話題になったばかり。現場からは「またボールの仕様を変えたのではないか?」という声も上がっていた。しかし、NPBが先週、ミズノの関係者に口頭で確認した際は「一切の仕様変更はありません」との回答があったという。

 世間を騒がせた統一球問題の翌年だけに、故意に仕様が変更された可能性は低い。一方で、0・426という反発係数は、統一球導入以前の10年の数値に近く、不自然であることも事実だ。再検査の結果、規定から外れた“違反球”であると認定された場合、公式戦での使用を継続するのか。1万ダースの在庫はどうするのか。今後のNPBの対応が注目される。【広瀬雷太】

 ◆統一球

 12球団でバラバラだった公式戦使用球のメーカーをミズノに統一し、11年から導入。コルク芯を覆うゴム材の配合、縫い目の幅や高さ、牛革の使用部位、生産地を変え、両リーグアグリーメントにある反発係数基準値(0・4134~0・4374)の下限に近づけようとした。打球の飛距離が約1メートル減る試算だった。しかし、11、12年の合計8度の検査ですべて平均が下限値を下回っていたため、13年には極秘裏に反発係数を高めていたことが判明。加藤コミッショナーは辞任した。今年1月には実行委員会でアグリーメントの反発係数基準を0・4034~0・4234に変更していた。