<ヤクルト8-9巨人>◇16日◇神宮

 2点リードで8回を迎えれば、巨人にとって安全圏のはずだった。最強の中継ぎユニット、マシソン-山口-西村の「スコット鉄太朗」が、もつれにもつれた終盤を演出してしまった。

 山口から入った。うつむいて持ち場に駆けた。何年も繰り返してきた光景だった。ただマウンドでは頼もしい姿がなかった。独特の低重心を取れず、パワーをためこむ体のねじりも小さい。打者に向かって腕が伸びてくる、あの迫力が影を潜めていた。無死一、二塁の悪条件でバレンティンだった。代名詞のスライダーを2球続け適時打された。なお1死一、二塁でベンチはタオルを投げた。

 振れている下位打線に、西村の浮いた球は通らなかった。3連打と犠飛でこの回、4点を奪われた。9回。片岡の適時打を確認したマシソンが肩を仕上げた。2死でも、バレンティンに真ん中高め151キロは虫が良かった。相手に絡み、騒乱の引き金まで引いた。山口は、川口コーチと投球フォームを確認しながら引き揚げた。西村は「ランナーをかえしてしまった。申し訳ない」とこわばった。マシソンは「エキサイトすることもある」だった。

 どこまでも「スコット鉄太朗」で勝ってきた。総崩れは原辰徳監督(55)の辞書になかった。「そうなんだよね。う~ん」と階段を上がり「ウチのパターン。明日、変えることでない」と言った。イニングまたぎの登板を極力避ける。香月、高木京、笠原の中から、状態のいい者を組み込む。不動だったマシソン-山口-西村の並びを変える。彼らの負荷、特に山口の負荷を一時的に下げ、復調を待つ環境を整える時だ。【宮下敬至】