<日本ハム10-6ソフトバンク>◇23日◇東京ドーム

 二刀流の進化の兆しは本物だ。日本ハム大谷翔平投手(19)が、野手での潜在能力の高さを証明する今季初アーチをかけた。ソフトバンク戦の1回2死で、逆方向の左中間へ1号ソロ。変化球を狙いながら直球を捉える高難度の技で仕留めた。今季1試合最多のアーチショーの号砲を鳴らす一撃。野手で出場10試合連続安打&4試合連続打点で、今季チーム初の2ケタ10得点の大勝へ導いた。投手でも既に2勝と、完全開花の2年目が到来した。

 体が勝手に反応した。1回2死、ボールカウントは1ストライク。大谷は、足元に座る昨季の女房役・鶴岡の脳裏を読んだ。「去年も(味方として)高めを攻められているのは見ていたし、膝元のスライダーか、どっちかだと思った」。究極の2択。絞ったのはスライダー。思いっきり、外れた。向かってきたのは、145キロの高め直球。それでもバットの軌道は、投球と交錯した。衝撃音を残し、左中間スタンドへ。

 大谷

 うまく反応できました。(バットの)芯ではなかった。ボール気味かもしれないけど、しっかり打ててよかったです。

 選択は裏目に、芯も外されたが、結果は今季1号の先制アーチだ。

 開幕から12試合、47打席目。昨季の34試合、92打席よりは早いが、特別な意識はない。「去年もそんなに打ってないし(3本)、そういう技術はまだない。でも2ストライクから粘れてるし、(昨季とは)違うかなと思う」。感情を押し殺し、足を緩めずにダイヤモンド1周。「いつも遅いって言われるので」。あっという間にベンチに消えた。

 実は読みは見事だった。5回は膝元のチェンジアップを右手一本で右翼線に運ぶ、技ありの二塁打。1打席目に高めのつり球を本塁打したことで、2択の選択肢が1つ削られていた。「得点にもつながったので良かった」。野手出場10試合連続安打、同4試合連続打点。20日楽天戦で116球を投げ、2勝目を挙げた「投手」が大きく貢献した。

 キャンプ中から、打撃練習の不足は自覚していた。補うために、自主練習を繰り返した。ある日の練習中、マシンが故障で動かなくなると渋々、奥にある別のマシンに移動した。が、今度は3球目に頭部付近への“ビーンボール”。あわや大惨事だが「今日はツイてないな」とつぶやき、さらに奥のマシンで2時間打ち込んだ。ホテルに戻ったのは予定時間より大幅に遅れたが「バットを振ったりとか、やろうと思えばいくらでもできる」。絶対に妥協はせず、野球を最優先に練習をこなしてきた。

 開幕前、栗山監督と交わした約束。「今年は何としても結果を残す」。2勝を挙げ、野手では打率3割9分1厘、初アーチも出た。この秋、約束は現実になる。【本間翼】

 ▼大谷が今季1号。1年目の大谷は3勝、3本塁打で、今季もすでに2勝。プロ入り2年連続で勝利と本塁打の両方を記録したのは、98~99年川上(中日)以来、15年ぶり。高卒1年目から2年以上続けたのは50~60年金田(国鉄)の11年、54~55年梶本(阪急)の2年、65~69年池永(西鉄)の5年、66~74年堀内(巨人)の9年に次いで2リーグ制後5人目になる。