<中日0-3阪神>◇24日◇ナゴヤドーム

 シンデレラボーイがガラスの靴で2歩目を踏み出した。阪神ドラフト6位岩崎優投手(22)がプロ初勝利の相手中日をまたきりきり舞いさせた。7回無失点の力投で、今季ビジターで初のカード勝ち越しを呼ぶ2勝目。防御率1・44で規定投球回に達し、リーグ2位に再登場だ。まぐれでもビギナーズラックでもない快投で、チームの鬼門をぶち破った!

 グラブを左手でたたき、岩崎は控えめに喜びを表現した。1点先制の援護を受けた直後の6回だった。安打と四球が絡み、2死一、三塁。同点に追いつかれれば流れが一気に傾きかねない場面だ。6番和田に果敢に内角を突き、3球で追い込んだ。最後は右飛に打ち取り6個目の「0」を刻んだ。7回無失点でチームを今季初のビジターカード勝ち越しに導いた。

 「ランナーのため方が良くなかったので、開き直って鶴岡さんのミットを目がけて思い切り投げました。いいバッターほど内角をついていかないといけないので、厳しく厳しくという気持ちでいってます」

 プロ4戦目で新たな引き出しまで開けてみせた。4回、森野に対して99キロのスローカーブを投じた。5回にも堂上直に101キロを投じた。「こういうのもあると思わせるために投げた。カウントをとれたのでよかった」と意図を説明。普段は辛口の中西投手コーチも「スライダー、カーブ。コンビネーションがよかった。十分十分」と絶賛した。

 184センチの体をいっぱいに使って、ギリギリまでボールを離さない。類いまれなる球持ちの良さは武器になる一方、肉体には負担となる。球団関係者は「特殊な投げ方だから、体には負担もある。ただずっとあの投げ方だし、体重も増えた。補える筋力はある」と口にする。武器を生かすために取りかかった体重増加に効果があった。

 入寮時は82キロだった体重を、90キロ近くまで増やした。「寮のごはんがおいしいからですね。(国士舘)大学の寮では肉が少なかったりしたけれど、いっぱいあるので」と無邪気に笑うが、下半身を中心にバランスよく筋力アップ。打者を差し込む直球に重さが加わり、スタミナもついた。

 初めて中7日で登板した。調整では反復横跳びやシャトルランを取り入れた。俊敏性、持久系のメニューで、体にキレを出した。そしてつかんだ2勝目。「1つでも多く勝ちを積み重ねていきたいと思います」。22歳がチームの鬼門ナゴヤで、でっかい仕事をやってのけた。【池本泰尚】

 ▼岩崎がナゴヤドームで勝利投手になった。阪神新人の同球場での白星は伊達昌司(プリンスホテル)の01年9月29日(6回2/3を1失点)、藤浪晋太郎(大阪桐蔭)の13年8月11日(9回無失点)に次ぎ3人目。岩崎はプロ初登板初先発の4月2日中日戦(京セラドーム大阪)でも5イニング無失点で、このカード12イニング無失点となった。