<中日7-0阪神>◇7日◇ナゴヤドーム

 阪神藤浪も、日本ハム大谷もなし得なかった快挙を、「ビッグ3」最後の男がやってのけた。中日の2年目、浜田達郎投手(19)が、プロ初先発で初勝利&初完封だ。9回6安打11奪三振の力投。予告先発の川上憲伸投手(38)がぎっくり腰で登板回避し、巡ってきたマウンドで躍動した。

 スクランブル登板の浜田が、大仕事をやってのけた。9回2死一塁。阪神大和を134キロ直球で右邪飛に打ち取ると、控え気味にマウンドで左手を握りしめ、周りを見渡しペコリペコリ。マスクを取り満面の笑みで歩み寄る谷繁兼任監督を見ると、またお辞儀。そしてようやく笑顔に。初お立ち台でも緊張気味だった。

 浜田

 最後の打者をしっかり打ち取ろうと思って力を振り絞りました。まだ実感が湧きません。

 133球。1回は3者凡退に打ち取ったが、2回から8回までは得点圏に走者を置く苦しい展開だった。それでも長い腕を精いっぱい振ることはやめなかった。「力の入れ方を変えた」と変化をつけたスライダーにフォーク。最速143キロの直球で積み上げた三振は11個。初登板での初勝利&2桁奪三振は大谷、藤浪もできなかった快挙だ。それどころか、2人がまだ達成できていない完封までやってのけた。

 浜田

 (大谷、藤浪は)頑張ってるなと思っていたくらい。対戦したら絶対に勝ちたい。

 2人を過剰に意識することはないが、負けない自信を築き上げてきた。「ビッグ3」最後の男になった。プロ1年目の昨年、制球に苦しんだ。帽子のツバには「無四球」と書き込み2軍戦で四球を出すと、何度もマウンドでその文字を見つめた。「去年はコントロールを意識しすぎて腕が振れなかった」。縮こまっていた自分を見直し信条である全力投球を取り戻した。1軍に抜てきされて今季キャンプは投手陣最多の2167球を投げてフォームを固めた。

 夢のような1日だった。先発予定の川上の登板回避が決定し、登板を告げられたのは試合開始の1時間前だった。「急きょだったので僕しかいないと思った」。その4時間後には憧れ続けたナゴヤドームのお立ち台に立っていた。チームの危機を救った若武者に谷繁兼任監督は「うれしいですよ。今日は浜ちゃんに尽きます」と大喜びだ。今季チーム初完封。負けていれば6カード連続負け越しの危機を19歳左腕が救った。【桝井聡】

 ◆浜田達郎(はまだ・たつろう)1994年(平6)8月4日、名古屋市生まれ。愛工大名電では1年秋からエース。2年秋の神宮大会準優勝。甲子園は3年春に8強、夏は初戦敗退。12年ドラフト2位で中日入団。183センチ、90キロ。左投げ左打ち。

 ▼中日は川上に代わって先発した浜田が11三振を奪って完封勝ち。予告先発の変更で代役投手の勝利は6人目だが、完封勝ちは浜田が初めて。代役投手の2ケタ奪三振も初めてになる。浜田はこれがプロ初先発。中日の投手が初先発で完封勝ちは96年8月2日巨人戦の門倉以来で初先発で2ケタ奪三振は87年8月9日巨人戦の近藤以来だ。浜田は19歳9カ月。プロ初先発で2ケタ奪三振の完封勝ちは05年4月24日久保(ロッテ)だが、10代ではプロ初登板の87年8月9日巨人戦で13三振を奪ってノーヒットノーランの近藤(中日=18歳11カ月)以来の快挙だった。