<日本ハム11-1ロッテ>◇16日◇札幌ドーム

 今季2度目の先発だった日本ハム5年目の中村勝投手(22)が、本拠地初勝利となる今季初白星を手にした。自己最長タイの7回を投げ、ロッテ打線を3安打に抑え、サブローの本塁打による1失点に封じた。昨季まで通算4勝はすべてビジターだったが、大量点にも守られ、札幌ドームで記念の1勝を挙げた。

 いくつもの切なる思いを背負った。中村は果たす使命と向き合い、勝った。抜てきされた今季2試合目。自分と約束していた。「絶対に、頑張らないといけない」。開幕投手の吉川らが不振で空いた先発ローテーションの谷間。ほかの投手を登用する案も水面下であった。栗山監督とフロント陣らの強行決断で託された。眠る才能を信じてもらった。目覚めるチャンスをプレゼントされた。

 奮闘を祈る無数の願いが、添え木になった。心を折らず、マウンドに力強く根を張った。丹念に、豪快に106球。長い両腕が翼のように広がる荒々しさが、スイッチが入っていたサインだった。序盤2回で9点の完璧な後押しも受けた。4回2死一、二塁と7回無死二、三塁。複数走者を許した2度のピンチは無失点で断った。130キロ台後半の直球と100キロ台のカーブ主体で押し切った

 1カ月前、誓いを立てた。今季初登板した4月17日オリックス戦。4回までに5点のアドバンテージをもらいながら4回0/3で降板した。2軍降格を通達された試合後。栗山監督と厚沢、黒木両投手コーチから熱いゲキを飛ばされた。「もう1回、やってきます」。反骨心がともる。千葉・鎌ケ谷で再調整に没頭。室外へ漏れるほど、ウエート室で絶叫しながら追い込む時もあったという。

 古風でいちずな22歳。入団当初は強く自己主張し、一部コーチと衝突したことも時に、あった。プロ5年目の今、丸みを帯びた。札幌ドーム初勝利。感謝の弁があふれた。「期待してもらっていても応えられなかった。もどかしかった、少し応えられたかも」。温かく見守ってもらった周囲へ、ささげた。覚悟を詰め込んだ右腕で、一緒に思いを遂げた。【高山通史】