<日本ハム10-2広島>◇3日◇札幌ドーム

 胸に宿る魂に応えた。日本ハム市川友也捕手(29)が手向けの1勝をささげた。恩師で交流が深かった巨人原監督の父、原貢氏(享年79)が亡くなってから初の先発出場。4打数4安打2打点、プロ初の猛打賞と恩返しの大暴れした。「めったにないこと。2度とないと思う」。天国へ逝った恩人へ最高の姿を見せられた。

 突然の知らせだった。原氏は5月29日に心不全のため、この世を去った。市川は「今、良い方向に向かっていると聞いていたので…。エッという感じ」と驚きを隠せなかった。東海大相模高では当時、東海大の野球部顧問だった原氏から捕手の心得を学んだことがあった。「高校の大事な時期に教えてもらったので良かった」。原氏から受け継いだ捕手としてのテンポや間合いは今、生きている。

 好リードが打撃にもつながった。先発中村は今季、市川と組んだ試合は2戦全勝を誇ってきた。この日は4回途中で降板となったが、その後の中継ぎ4投手は無失点に抑えた。「流れは来たんじゃないかな」。普段は打撃より捕手練習に重点を置いている。控えの試合でも大野の配球を見て勉強。「捕手としてが第一なので」とポリシーを貫いている。

 本拠地・札幌ドームでの初めてお立ち台に立った。静かに感慨に浸った。「やっと立てましたね。あんまり打たないので…」。新たに生まれた節目の日。少しだけ恩師に報いた。これからも一緒に戦っていく。【田中彩友美】