<阪神4-3日本ハム>◇17日◇甲子園

 阪神マット・マートン外野手(32)が、サヨナラ打を放って死闘に決着をつけた。延長12回裏2死走者なしから、3番鳥谷が四球、続く新井良が左前打で一、二塁とし、マートンが中越え二塁打で4時間46分の激戦を制した。9回に呉昇桓がセーブに失敗した嫌な展開だったが、最後の最後でマートンが勝負強さを発揮した。チームは今季交流戦初の連勝をマークし、広島を抜いて2位に浮上した。

 時計の針は11時に近づこうとしていた。空からは雨も落ちてきた。それでもスタンドは黄色に染まっていた。延長12回2死一、二塁。マートンは大歓声を浴びながら打席に立った。剛腕カーターの初球、スライダーを捉えた。歓声とともに打球は中堅頭上を越えていった。4時間46分の総力戦にケリをつけ、約1カ月ぶりの連勝をチームにもたらしたのは“最強助っ人”だった。

 「自分としては積極的にいこうと思っていた。ああいう場面は好きなので」

 これも強打者の宿命か。直前の打席、延長10回2死一、二塁では塁が埋まっているにもかかわらず、敬遠された。相手は2安打していたマートンとの勝負よりも、満塁にする方が安全だと判断した。いまや、どのチームもまともにストライクゾーンで勝負してくれない。安打製造機の本能と、ボール球を振らないという自己制御との葛藤にいら立ちもある。そんな中でわずか1球を仕留めたのが、マートンのすごみだった。

 「勝って家に帰りたかった。オオキニ!

 タイガースファンガ、イチバンデス!」

 お立ち台に上がったマートンはこう叫んだ。東京に住んでいる友人が数年前から阪神ファンをしているという。以前は巨人ファンだったのになぜなのか?

 そう聞くと、こんな答えが返ってきたという。

 「どんなに負けていても阪神ファンは最後まで応援している。そんな阪神ファンの姿を見て、ファンになろうと決めたらしい」

 あえてエピソードを披露したのは虎党に強い絆を感じているからだろう。普段から状況が許す限りサインに応じる。声援をくれれば笑顔を返す。この日も土壇場で逆転されても、延長12回2死走者なしでも、最後まで信じてくれた。そんな最高のファンへ-。マートンがサヨナラ打で報いた。【鈴木忠平】