<広島8-4日本ハム>◇21日◇マツダスタジアム

 日本ハム大谷翔平投手(19)の奮闘が、水の泡になった。広島戦に「3番DH」で先発し、ルーキー大瀬良との注目の初対決が実現した。5回にリードを4点に広げる左中間適時二塁打など、2二塁打で3打数2安打。個の勝負で完勝したが、まさかの幕切れ。5回裏に一挙8失点で逆転され、直後の6回表に降雨コールドで敗れた。大谷にとっても、チームにとっても後味悪い黒星を喫した。

 感情をむき出しにした。大谷が三塁ベンチで一変した。5回が終わり、試合が中断した。先輩たちとにこやかに談笑しながら、再開を待った。中田のイタズラの標的にされた。無邪気に反攻の機会を切望していたが、かなわなかった。降雨コールドで、逆転負け。決定した瞬間、大瀬良攻略の先頭に立つ、白いタオルをかごへと力いっぱい投げつけた。珍しく憤った。「タイムリーは打ちましたけれど結果、勝てなかったので」。快音2発を奏でても無情な結末に、消沈した。

 完全にヒーローの座は、手中にあった。注目新人とオープン戦を含めても、初のガチンコ勝負。1回は空振り三振に倒れた。3回の第2打席。スタンドを真っ赤に染めた「カープ男子」と「カープ女子」が、ざわめいた。外角、低めボール気味の変化球。恵まれたリーチを生かし、バットの先で拾い、振り切る。ライナー性の打球。中堅の名手・丸が1度前進し、判断ミスに気付き、後ずさりした。追い付けず頭上を抜ける二塁打。サプライズな軌道で、鯉党を沸かせた。

 たたみかけて5回。1点を追加し、なおも2死三塁。高めへ外した直球を強振。左中間を破る二塁打で4点目を演出した。5月1日西武戦以来、今季9度目のマルチ安打。「そんなに(大瀬良を)意識しないで打てた」と平然と仕事をした。完全な勝ちパターンをお膳立てしたが、その裏に今季最多の1イニング8失点で、ひっくり返された。栗山監督が「久々に打者で使って。内容的にも素晴らしかったし、打線もつながっただけにね」と生かせず、嘆く1敗。前戦の18日阪神戦は快投で白星へ導いた。この日は打者。弾ける19歳が運んできたはずだった、価値ある「二刀流連勝」を逃した。【高山通史】

 ▼日本ハムが今季ワーストの1イニング8失点で逆転負け。1イニング8失点以上は12年6月30日西武戦(西武ドーム)で6回に9失点して以来。